泉鏡花記念館の感想
先週末、シルバーウィークを利用して家族で金沢日帰り旅行へ行きました。金沢観光スポットの一つである近江町市場に向かう途中、私は偶然、とても気になる名前の建物を見つけました。
それが泉鏡花記念館です。
入場料も300円と安かったです。
ふらふらと入場し、泉鏡花の使っていた半纏や、直筆の原稿などを見ることができました。泉鏡花が潔癖症であったというのは有名な話ですが、それに纏わるいくつかのエピソードも説明書きにみることができました。
個人的には、解説などが聞けるミニシアターがあったので、じっくりと鑑賞したかったのですが、泉鏡花が男か女すら全く知らない父と母が外で待っているという状況だったので全くゆっくりと館内を回ることができず、そのままサヨナラという感じでした。
「わい、男やで」
と泉鏡花が悲しそうな顔をしている姿を思い浮かべ、こういう施設を訪れるような旅は一人旅に限るかなと少ししんみりした気持ちで、その場を去ることに。
しかし話はここで終わりません!
丁度そのとき受付でいただいた金沢の文化施設をめぐるスタンプラリーを見ると、あと2つだけスタンプをためれば、泉鏡花記念館のクリアファイルがもらえるという事実に気付いたのです!
クリアファイルを無料でもらえる!?
ということでテンションが上がり、あと2つのスタンプを手に入れるために『金沢蓄音機館』と『金沢文芸館』に足を運ぶことに。ちなみに『金沢文芸館』には泉鏡花文学賞を受賞されている作家さんの本が飾られていました。
個人的には好きな作家の多い賞なので、眺めていて楽しかったです。
『金沢蓄音機館』ではさまざまな型の蓄音機を見ることができます。それまで一切建物に入ろうとしなった父と母が唯一、一緒に入った建物でした。
『金沢蓄音機館』は、子供から大人まで家族で楽しめるのではないかなと個人的には思いました。そしてついに手に入れたA4クリアファイルをスタンプ3つで手に入れることができるというのは、個人的にはお得だと感じました。
泉鏡花と中島敦
ちなみに偶然、この記事にたどり着いたものの
「泉鏡花?誰、それ」
と怪訝な顔をした人のために、ここで私の大好きな泉鏡花を讃える中島敦の『鏡花氏の文章』の冒頭を紹介したいと思います。
日本には花の名所があるように、日本の文学にも情緒の名所がある。泉鏡花氏の芸術が即ちそれだ。と誰かが言って居たのを私は覚えている。
併し、今時の女学生諸君の中に、鏡花の作品なぞを読んでいる人は殆んどないであろうと思われる。又、もし、そんな人がいた所で、そういう人はきっと今更鏡花でもあるまいと言うに違いない。
にもかかわらず、私がここで大威張りで言いたいのは、日本人に生れながら、あるいは日本語を解しながら、鏡花の作品を読まないのは、折角の日本人たる特権を抛棄しているようなものだ。
中島敦といえば、高校の教科書で使用されている『山月記』の作者として誰もが知っている作家でしょう。その中島敦にここまで言わせた泉鏡花の作品を、きっとよんだことのないという方も多いでしょう。
ちなみに中島敦がこの文章を書いたのは昭和8年(1933年)です。
泉鏡花が代表作『夜行巡査』や『外科室』を文芸倶楽部に掲載したのが明治28年(1895年)です。
今時の女学生諸君の中に、鏡花の作品なぞを読んでいる人は殆んどないであろうと思われる
という部分から当時においても泉鏡花の作品が、若者に好んで読まれるような作品ではなかったことが読み取れます。
しかし泉鏡花の作品を読まないのは
日本人たる特権を放棄しているようなものである。
ここまで言われて、彼の本を読まない理由はないですよね。ぜひこれを機に、手に取っていただきたい一冊です。
*ちなみに中島敦の『鏡花氏の文章』はこちらから青空文庫で無料で読めます。
泉鏡花も青空文庫で無料でほとんどの作品を読むことができます。私もすべての作品を読んでるほどのファンではないのですが、個人的なおすすめは初めて読んだ泉鏡花作品の『夜行巡査』です。
勿論、中島敦の『山月記』もこちらから読めます。
金沢観光の一つとして
他にも、金沢では近江町市場に行ったり、ひがし茶屋町に行ったり、21世紀美術館に行ったりとなかなか充実した時間を素超すことができました。
ちなみにひがし茶屋町は、食べ歩きのできるような施設があるわけではなかったので、もしこれから訪れる予定のある方は、事前に昼食を取って訪れることをお勧めします。
金沢21世紀美術館の感想はこちらからどうぞ。