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死ぬまでに見てほしい*おすすめのフランス映画10選

おすすめのフランス映画10選

十代のころ、田舎から都会に出て一人暮らしを始めた私には、夢がありました。それは誰にも邪魔をされることなく好きなだけ映画を見るという夢です。

夢をかなえるために一人暮らしを始めた春から、私はレンタルショップで毎日映画を借りました。それでも飽き足らず、最終的にはそのお店のアルバイトをしながら、朝から晩まで映画を見続けるという生活を送りました。

そう、私は夢を叶えたのです。

サイレント映画から公開されたばかりの映画に至るまで時代を問いませんでしたし、英語圏や日本のものだけでなく、世界各国の様々な映画を鑑賞しました。

その中でも特に私が夢中になったジャンル。

それがフランス映画

映画と言えば、ハリウッド。多くの人がおそらくそう答えるでしょう。

けれども、果たして本当にそう言い切れるものなのでしょうか。

フランスを舞台にした素敵な映画は山ほどあります。

けれども実際にフランス映画を見たことがあるという人は少ないかもしれません。知られているのもごく一部の作品ばかりのような気がします。それがとても悲しくなる時があります。

そこで私はこの記事で、フランス映画をもっと知りたいという人にオススメのフランス映画を紹介していきたいと思います。これからフランス映画を見たいという方にも見やすい映画を段階を踏んで選んだつもりです。

興味がある方は、映画鑑賞の手引きとしてご参照ください。

「フランス映画初心者」にもおすすめできる最初の4本

まずはフランス映画をあまり見たことのない人にもお勧めしやすい映画監督の映画を4本紹介したします。

1、アルベール・ラモリス『赤い風船』Le Ballon Rouge(1956)

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とても有名な短編映画です。

まるでディズニーのアニメーションを見ているように幸福な気持ちで鑑賞できます。

フランス映画に付きまとう難解なイメージは一切ありません

この映画の魅力を語るだけで1つ記事が書けるほどに好きですが、今回はアナログ撮影という点が挙げておきましょう。

『赤い風船』アナログ撮影の魅力

この映画の中には、ふわりふわりと命を宿しているかのように動き回る赤い風船が登場します。でも、よく見ると糸で引っ張られているのがわかります。つまり最近のデジタル映画のようにフェイクとして作り出された動きではなく、実際に風船を動かして、生きているように見えるよう工夫して撮影しているんです。

この映画が製作されたのは1956年

しかし、60年以上も前に撮影されたとは思えないくらいに、今見ても我々の心を動かす力があります。

モノが命を宿すというのは、ディズニー映画が良く使うストーリーテリングの常套手段なのですが、アニメーションでなくてもここまで、ファンタスティックに愛らしく、きらきらと映画の魅力に満ち溢れた素晴らしい作品を撮影することも可能なのだなと、映画の可能性に感嘆のため息が思わず零れてしまう作品です。

ちなみにこの映画を撮影した映画監督ラモリスは空に魅せられ、その後ドキュメンタリー映画製作中にフライトしていたところ墜落死してしまうという悲惨な最期を遂げてしまいます。何とも悲しい気持ちになるエピソードですね。

そして、このエピソードを知っていると、最後に風船とともに空に旅立つ少年の姿に、少し恐怖を感じてしまうのは私だけでしょうか。

色々な解釈が可能になる作品です。

アンドレ・バザン「禁じられたモンタージュ」

解釈と言えば、この『赤い風船』という作品はフランスの有名な映画批評家アンドレ・バザンが「禁じられたモンタージュ」という小論を書いたことでも有名です。

この小論の中でバザンは、モンタージュ(AとBという別々のショットをつなげて関連性を持たせる技法)を否定し、その代わり長回し(カメラを回したまま一つのショットを撮影する技法)を評価しました。

この小論は現在、岩波文庫化されている「映画とは何か(上)」という本に収録されています。映画好きな方は一読されることをお勧めいたします。

映画とは何か(上) (岩波文庫)

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なお映画に関する書籍については、過去記事で色々と紹介しています。

よろしければ、合わせてごらんください。

映画に関するオススメ書籍5選 ―入門編― - The Cat's Pajamas

同時収録されている『白い馬』

DVDに同時収録されている『白い馬』もお勧めです。

ただ『白い馬』は白黒なので最初は『赤い風船』のほうが見やすいと思います。

URLは載せられませんが両作品とも、YouTubeに本編動画が挙がっています。

気になる方は”The Red Ballon””1956"で検索してみてください。

2、ジャン=ピエール・ジュネ『アメリ』Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain(2001)

フランス映画を見たことのない女子大生に最初の一本として薦めるなら『アメリ』一択。恋に夢見る女心を刺激する可愛らしくお洒落で個性的なフランス映画。ご存知の方も多い映画かもしれませんね。

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私自身、十代のころにフランス映画にはまった原点も、この『アメリ』というフランス映画にあった気がします。

サウンドトラックも繰り返し聞いていました。

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今ではもう少女とは言い難い歳になってしまったので、かつてのような感動をもって見ることができない映画の一つかもしれません。もしあなたが十代(もしくは二十代)で、恋というものに甘酸っぱい胸躍る響きを感じる時代にあるのならば、これほど面白い映画はほかにないと思います。

私はこの映画を見て以来、パリ・モンマルトルに行くことがずっと夢なのですが、そういう女性も多いのではないでしょうか。

ただこの映画で描かれているパリは随分デジタル編集を施された架空のパリですので、実際のものとは幾分違った点も見られるのでしょうね。

ジュネ監督の作品は全部鑑賞しましたが『アメリ』が断トツで一番面白いです。次点は『デリカテッセン』かな。

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『アメリ』以外の他の作品は、登場人物のキャラクタライズに力を入れ過ぎて、ストーリーが複雑にわかりくいものになっている印象です。その点『アメリ』は非常によくまとまっていながら、ディティールを楽しむこともできる面白い映画だと思います。

3、フランソワ・オゾン『焼け石に水』Gouttes d'eau sur pierres brulantes(2000)

同性愛者の映画監督と言えば、スペインを代表する映画監督ペドロ・アルモドバルや、最近実力派の若手映画監督としてケベック出身のグザヴィエ・ドランといった名前がぱっと上がるかと思います(今回はフランス映画というくくりのため紹介しませんが、両人とも素晴らしい映画を撮影する映画監督ですので、興味がある方はぜひ鑑賞してください)。

ここにフランスから名前を挙げるならばフランソワ・オゾンという監督がいらっしゃいます。大胆な男性らしさと繊細な女性らしさの中間に位置するような中世的な映像美を生み出す才に恵まれた映画監督だと思います。

某レンタルショップには置いていないかもしれませんが、個人的におすすめしたいのが『焼け石に水』という作品です。自分の頭の中にある常識が全部ひっくり返って訳が分からないまま爆笑してしまうような破壊力のある作品で、超おすすめですね。

焼け石に水 [DVD]

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この作品は以下の初期作品を集めたDVDBOXに収録されています(このDVDBOXに収録されている作品はどれもおすすめです。特に『海を見る』という背筋の凍りそうなサスペンス映画が収録されています。ぜひ一見ください)。

フランソワ・オゾン DVD-BOX

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レンタルDVDでフランソワ・オゾンの作品を楽しみたいという方もいらっしゃるかと思います。

そのような方には以下三作品をお勧めしておきます。

『ぼくを葬る』

まずはメルヴィル・プポー主演の『ぼくを葬る』です。他の映画監督にはあまりみることのできない繊細さに満ちた一本で、フランソワ・オゾン監督の感性がいかに鋭くみずみずしいものであるかを体感できる一本です。

ぼくを葬る [DVD]

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『スイミング・プール』

次にお勧めしたいのは『スイミング・プール』という作品です。こちらはサスペンス映画になっています。

先ほど紹介したDVDBOXに収録してある『海を見る』には劣りますが、お洒落なサスペンス映画の小品として万人が鑑賞できる映画かと思います。

スイミング・プール (字幕版)

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『8人の女たち』

それから『8人の女たち』も併せてみてほしいところです。上記二つを見たうえでこの作品を見るとフランソワ・オゾンという映画監督に持つイメージががらりと変化するかと思います。

8人の女たち [Blu-ray]

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以上の三作品であれば、比較的どのレンタルショップにも在庫があるかと思われます。ただ一番見てほしいのは『焼け石に水』と『海を見る』なんです。

機会がありましたら、ぜひ手にお取りください。

フランソワ・オゾン DVD-BOX

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4、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ『少年と自転車』Le gamin au vélo(2011)

少年と自転車 [DVD]

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ダルデンヌ兄弟は本当におすすめ。

どうにも不遇な子供の出てくる映画が多いので、あまりに悲しい気持ちになってしまうかもしれませんが、お涙頂戴映画とは一線を画し、絶妙な塩梅で鑑賞者の琴線に触れる素晴らしい映画ばかりを撮影されていると思います。

ただこの二人は厳密にいうとベルギー出身ですのでフランス映画の括りに入れるのは少し躊躇いもありますが、フランスとの合作映画ということで大目に見ましょう。ただ紹介したいだけという気持ちの方が強いかもしれません。

レンタルショップにも比較的おいてある作品ばかりだと思います。パルム・ドール賞を取った『ロゼッタ』が一番有名な作品かもしれません。

ロゼッタ [DVD]

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フランス映画をより深く知りたい人におすすめの3本

次に時代を少し遡り、フランス映画を映画史を含めてより深く知りたい人にお勧めの3本を「ヌーヴェル・ヴァーグ」の作品に限定して紹介します。

5、フランソワ・トリュフォー『大人は判ってくれない』 Les Quatre Cents Coups(1959)

フランス映画を紹介しているのにトリュフォーの作品を入れないわけにはいきません。一番有名なトリュフォーの処女作『大人は判ってくれない』をここでは紹介いたします。

大人は判ってくれない/あこがれ Blu-ray

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フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、エリック・ロメール、クロード・シャブロルといえばフランスの映画運動「ヌーヴェル・ヴァーグ」を牽引した代表的人物として真っ先に名前が挙がる映画監督ですね。

ここで少し「ヌーヴェル・ヴァーグ」について説明を補足しておきます。

ヌーヴェル・ヴァーグとは

「ヌーヴェル・ヴァーグ」というのは「新しい波」の意をもちます。50年代にカイエ誌で批評活動を行っていたトリュフォーらが目指したのは、今までの古きフランス映画の伝統を破壊する新しい映画。その映画制作は批評活動から始まった彼らが、自分たちも映画を撮れるぞということを宣言する試みでもありました。

そのため彼らの映画を、何も映画史の知識を持たないまま見ると、その良さがさっぱりわからないというのが正直な感想ではないかと思います。でもそれでいいのです。彼らが製作したのはあくまで実験的な低予算映画の範疇にあるものばかりですし、演出の仕方もカメラワークも非常に独特なものが多いからです。

しかし大事なのは、彼らの存在が映画史にとって非常に重要な意義を持っているということ、そしてそれまでの映画にはない新しさを纏い、多くの観客を魅了したという点です。

フランス映画を語るとき、この「新しい波」を語らずにはいられないというのは、この運動は非常に大きな分岐点として世界中の映画の傾向に影響を与えたという事実と、彼らの名前や運動そのものがもはや一つ史実として綿々と語り継がれるべきほどに時が流れたという点にあるのです。

そしてこの『大人は判ってくれない』はその最初の映画(ゴダールの『勝手にしやがれ』はその一年後)で「ヌーヴェル・ヴァーグ」が落とした最初の爆弾でした。

以後、トリュフォーの映画で頻繁に主演を務めるジャン=ピエール・レオが主演を務めています。トリュフォーの映画の中でジャン=ピエール・レオがどんどんと大人になっていく姿を眺めるというのも彼の映画を楽しむ一つの方法です。

トリュフォーと自分史

さてこれはあくまで個人的な展開ですが、トリュフォーは他のヌーヴェル・ヴァーグ時代の監督に比べるとこれといった代表作を非常に挙げにくい監督です。

というのもロメールやゴダールが一貫した「作風」のようなものを形成していくのとは反対にトリュフォーは非常にブレる映画監督だと思うからです。彼はものすごい映画ヲタクということでも知られているのですが、だからこそ逆に自分自身の個性ではなく、あらゆる映画への憧れを次から次へと自分の映画で試すような演出を行っているかと思います。

トリュフォーは批評活動でもかなり有名で、昔の古典的なフランス映画を若いころ悉く批判しているんです。「フランス映画の墓堀り人」なんていう異名も持っていたりします。それにもかかわらず、歳をとると常に革新的な作品を貪欲に求めるゴダールと異なり、結構無難な作品ばかり撮影していたりする。けれどもそんな矛盾もなんだか愛しい映画監督だったりします。

そんなトリュフォーの特徴を一つ分かりやすく語るのであれば「自分語り」が多いという点が挙げられます。『大人は判ってくれない』もそうですが、まるでトリュフォー自身のことを俳優であるジャン・ピエール・レオに投影して描いたような作品が多いんですね。

その中でも個人的に大好きなのは『恋愛日記』(1977)という作品です。

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女の脚が好きすぎて好きすぎて仕方がない男が、美脚を持つ女性を次々に口説くという作品なのですが、女と子供を愛したことで知られるトリュフォーならではの憎めない作品だなと思います。ジャン・ピエール・レオ主演ではありませんが、おすすめの一本です。

6、ジャン=リュック・ゴダール『女は女である』Une femme est une femme (1961)

ゴダールは、とても有名なフランスの映画監督ですね。彼の映画は少し難解なものが多く、なんとも近寄りがたい印象を抱いてしまう方も多いでしょう。しかし、意外にもゴダールの初期作品は見やすく、フランス映画に興味を抱いたばかりの方にも、素直にお勧めできます。

フランス映画初心者の方に一番のお勧めできるのは『女は女である』です。この映画は、主役のアンナ・カリーナの美しさに魅了される一本。テンポも良く、途中で居眠りする気にもならないはずです。

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ちなみにアンナ・カリーナというのは、ゴダールの元妻でフランスを代表する女優。この映画は、まさに今でいうミュージックビデオの先駆けといってよい作品で

どう?俺の女。

めっちゃいい女やと思わへん?

という映画監督の声が聞こえてきそうな嫁映画の先駆けとしても知られています。小難しい印象は、ほとんどいってなくコミカルでポップ。そしてハイセンスな映像が続く楽しい映画です。

ゴダールの映画は難解?

昔、映画好きの友人と集まって「ゴダール鑑賞会」なる企画を開いたことがありました。ゴダールの映画を集められるだけすべて集め、制作順に鑑賞し、意見を述べ合うというストイックな会です。

その結果、集まった全員が途中で寝てしまい、どこまで鑑賞したかさっぱりわからなくなるという悲劇に見舞われ、残念ながら結成二日目にして、やむなく鑑賞会は、お開きとなりました。

フランス映画が好きというからには、一度ゴダールにかぶれてみたいという気持ちも強い。ですが今のわたしでは、どうにも中期後期の作品は、頭に入ってこないというのが正直なところです。

ただゴダールの初期作(『勝手にしやがれ』~『気狂いピエロ』)は非常に見易く、面白いものが多いと思います。

例えば長編処女作の『勝手にしやがれ』À bout de souffle(1959) 。私はこの映画が大好きで、よく一人で運転しながら「パットリッシア~♪」とつぶやいています。

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はなればなれに』もおすすめです。

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一番のお勧めは『気狂いピエロ』でしょうか。

この映画を見ていると、日常の中でゴダールの映画に出てくる登場人物のモノマネをしたくなります。

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ちなみにゴダールに関しても書籍とあわせて映画を楽しむとより理解が深まるかと思います。やはり時代背景やヌーヴェル・ヴァーグに関する知識がないと、良さがわからない部分もあると思いますので、興味がある方は図書館にお通いください。

映画と同じく難解な書籍が多いですが、四方田犬彦の『ゴダールと女たち』は非常に読みやすかったです。

ゴダールと女たち (講談社現代新書)

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 7、エリック・ロメール『海辺のポーリーヌ』Pauline à la plage(1983)

エリック・ロメール コレクション 海辺のポーリーヌ [DVD]

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ゴダールと同じくヌーヴェル・ヴァーグを代表する映画監督として知られるロメールは元語学教師ということもあり、非常に文学的な作品を撮る映画監督です。

どういうことかというと、とにかく登場人物がよく喋る。それでいてその会話が非常に面白く、いつの間にか引き込まれてしまうという独特の面白さがあります。

基本的には恋愛が主題の映画ばかり。そしてどの映画もよく似ています。小さな人間関係の中で起こる摩擦や連れ違いを含めた色恋沙汰、そこに散りばめられたユーモアたっぷりの会話劇。

どれもこれも似たような映画ばかりなのに、まるで中毒になったように見漁ってしまうロメールの映画。

一時期ロメールに夢中になっていた私は、シリーズものに関してはすべての作品を鑑賞しました。ロメールは非常に多作なので全部見るのは本当に大変なのですが、それでもゴダールやトリュフォーなどに比べると手軽に次々と見続けることのできるお茶目な作品が多いです。

あとロメールの作品は色々シリーズになっているんです。そのためシリーズごとに一気に鑑賞しやすいという利点があります。

なかでも特に好きなのがここで紹介する『海辺のポーリーヌ』それから『緑の光線』と『飛行士の妻』が収録されているシリーズです。

緑の光線 (エリック・ロメール コレクション) [DVD]

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ロメールの映画を見ると、日本にはバカンスという制度がないことを心の底から恨むようになります。この三作はすべて「喜劇と格言劇(Comédies et roverbes)」シリーズという6作品のセットになっています。この6本はどれも本当に面白いです。

エリック・ロメール・コレクション DVD-BOX IV (飛行士の妻/美しき結婚/海辺のポーリーヌ)

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ちなみに『海辺のポーリーヌ』で主役を務めているアマンダ・ラングレが再び『夏物語』という作品で起用されています。

この「四季の物語」シリーズも非常にお気に入りです。というかお気に入りが多すぎてロメール映画の紹介はキリがないですね。

エリック・ロメール 四季の物語 BOX [DVD]

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ちなみにエリック・ロメールの評論集に『美の味わい』という一冊があります。ロメールの映画制作の指針がうかがえる貴重な一冊です。字は小さいですが内容は比較的読みやすいかと思います。

美の味わい

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ヌーヴェル・ヴァーグの監督たちはそもそも批評活動を出発点としていた人たちですので、やはり映画だけでなく文章も併せて味わってほしいものだなと思います。

より難解なフランス映画を鑑賞してみたい方にお勧めの2本

次に映画をあまり見たことのない鑑賞者には少し内容の分かり辛いかもしれない2本の映画をお勧めします。

8、レオス・カラックス『ホーリー・モーターズ』Holy Motors(2012)

レオス・カラックスという映画監督は、とても寡作で作品数が少ないので、一気に全作品を鑑賞することができます。できれば、全作品を制作順に鑑賞してほしい処なのですが、今回は中でも一番新しい『ホーリー・モーターズ』という映画をご紹介いたします。

ホーリー・モーターズ 【リムジン・エディション】(Blu-ray Disc)

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この映画はレオス・カラックスの13年ぶりの長編映画として公開当時話題になりました。映画館で鑑賞し、私が生涯で見た映画ベスト30に入れようと思うくらい衝撃的な映画でした。

ただ内容が小難しく、映画史に通底していない鑑賞者や、今まであまり多くの映画を見たことがないという人には何が何だかさっぱりわからない映画かもしれません。

それでもおすすめしたいと強く思うほど、まるで頭をガツンとレンガか何かで叩かれたように価値観を揺さぶられる何よりも強い映画愛に満ちた傑作映画だと私は評価しています。

パンフレットの中のインタビューでカラックスはこのように語っています。

17歳のとき映画と出会えたことはとても幸運でした。私は「島」と呼んでいますが、地上のどこかにその場所はあります。私はその島に住みたいと望みました。

島を出発点として、生きること、人生や死を別の角度から見ることが出来ます。私はあまり多くを作品を作っていませんが、自分ではその映画という島に住んでいるつもりです。

その島は、大きな美しい墓場であるかもしれない。だから責任があるとすれば、そこに眠る死者たちに対して、ときどき名誉を返してやることだと思います。

確かに映画の中には不吉な部分がある。しかし大変美しい墓場です。確かコクトーが「映画とは、働いている死者を撮影することだ」と言っていました。ですから死は、常に映画の中に存在しています。

同時に、私はその島なしで生きる自分を想像できません。

カラックスにとって映画がどれほどに大切なものなのかが良く伝わってくる文章だと思います。

早熟の天才レオス・カラックスの「アレックス三部作」

23歳で初の長編映画『ボーイ・ミーツ・ガール』を撮影し、一躍脚光を浴びたカラックスは”神童”もしくは”アンファン・テリブル(恐るべき子供)”という呼び名で、広くその名を世界に知られる映画監督となりました。

彼の映画の特徴を一つ上げるのであれば長編処女作から続いて第二作、第三作ともドニ・ラヴァンという男優が主演を務めていることがあげられます。一度見たら忘れられない容貌と身体能力、唯一無二の映画俳優です。

この作品の中でドニ・ラヴァンは一貫して”アレックス”という名を持つ少年の役を演じているため、この三作品『ボーイ・ミーツ・ガール』(1984)、『汚れた血』(1986)、『ポンヌフの恋人』(1991)を総称して「アレックス三部作」と読んだりします。

これらの作品は続き物ではなく、アレックスという同じ名をもつ少年をパラレルワールドを展開するように描いた三作品と考えてください(つまりどの映画から見ても問題はありません)。

フランス映画に興味があるのであれば、この三作はぜひすべて鑑賞してほしい処です。というのも最近ではTSUTAYA発掘良品さんが精力的に映画のDVDレンタル化を進めてくださっているので、一気に鑑賞することが可能なんです(私が十代の時はこんなのはなく、探し出すのに非常に苦労しました)。

近くのTSUTAYAにないという方はTSUTAYAの宅配レンタルの無料期間で全作品みられるかと思います。

ちなみに私が三部作の中で一番好きなのは『汚れた血』(1986)です。

汚れた血<HDニューマスター版> [Blu-ray]

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長編映画が苦手な方へ

ただ中には長編映画を見るのは疲れるという方もいらっしゃるかと思います。そのような方に良くお勧めするのが短編映画です。

レオス・カラックスは非常に作品数の少ない監督なのですが、実は非常に面白い短編映画を製作しています。それが『TOKYO』(2008)というオムニバス映画集の中に入った「メルド」という作品です。

TOKYO!

TOKYO!

 

ちなみに「メルド」というのは日本語で「糞」の意味です。題名の通り、なかなかインパクトの強い映画になっています(この記事でおすすめしている『ホーリー・モーターズ』の予告編的な位置づけになりますので、合わせてご覧になられることをお勧めします)。

検索するとYouTubeで動画を見ることが出来ますので、自分の嗜好に合うかどうかを確認してみてください。私は好きすぎて涎が出るくらいワクワクする短編です。

『ポーラX』は駄作か?
ポーラX [DVD]

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ちなみに「アレックス三部作」の後に取られた長編映画にに『ポーラX』という作品があります。この作品はドニ・ラヴァンが出ていないカラックスの作品の中では少し異色の作品となっていて、世間的には駄作と評価されていますが、私も駄作だと心から思います。

明らかに失敗作なので拘りのない方は鑑賞しなくても良いと思います。個人的には、この映画の後にもう一度ドニ・ラヴァンを起用し『ホーリー・モーターズ』を撮影してくれたという点が非常に嬉しかったです。

フランス映画入門としてお勧めできるかは別として、何かの機会に手に取っていただけたらと心から思う作品として紹介させていただきました。

9、ロベール・ブレッソン『バルタザールどこへ行く』(1970)AU HASARD BALTHAZAR

バルタザールどこへ行く [DVD]

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今回紹介する映画監督の中では一番の古参となるロベール・ブレッソンの作品です。先ほどのも紹介したようにトリュフォーをはじめとするヌーヴェル・ヴァーグの運動家たちは古き良きフランス映画を痛烈に批判したのですが、逆にその批判を浴びることなく、逆にリスペクトされた映画監督というのも存在していました。

その一人がロベール・ブレッソン。今もなお、多くの映画監督たちに愛され続けているフランス映画の名匠です。ブレッソンの映画を見たことなく、フランス映画が好きなどとは口が裂けても言えないのではないでしょうか。

ブレッソンの映画に関するこだわりは、並みのものではありません。自分の納得できるシーンを撮影するためなら妥協はしない。余計なシーンなど1つもない。

ブレッソンの作品もすべて鑑賞しましたが、一番お勧めしやすいのは『バルタザールどこへ行く』ではないかと思います。

タイトルがなんだかとても可愛らしいと思いませんか?

内容はどうでしょうね♡と濁しておきますが、ブレッソンの映画もなかなか悲哀に満ちた重苦しい作品が多いです。先に紹介したダルデンヌ兄弟が敬愛しているというのも妙に頷けます。

興味がある方は以下の書籍を手に取ってみると、ブレッソンの映画の特徴や一貫した演出技法がつかみやすくなるかもしれません。とても薄い本ですし、パラパラとめくるだけでも非常に興味のそそられる一冊ですよ。

シネマトグラフ覚書―映画監督のノート

シネマトグラフ覚書―映画監督のノート

 

あとブレッソンに関する本としてはアンヌ・ヴィアゼムスキーの『少女』がおすすめです。『バルタザールどこへ行く』の主演を務めたヴィアゼムスキーの語る映画の舞台裏も非常に興味深いものでしたが、何より彼女のみずみずしい感性にあふれた文才に、はっとさせられる一冊でした。

少女の一成長物語としても興味深いお勧めの一冊です。

少女

少女

 

ブレッソンの映画はどれもお勧めですが個人的にはドストエフスキーを原作とした『白夜』や『やさしい女』あたりが非常に好きです。原作を読んだうえで、なお映画としても楽しむことが出来ます。

最近ようやくブルーレイが発売されたのも嬉しいところです。

ロベール・ブレッソン監督『白夜』Blu-ray

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すべての映画好きに捧げたいフランス映画1選

最後にフランス映画というジャンルを抜きにして強くお勧めしたい、すべての映画好きに愛されるであろう大好きな名作を一本紹介したいともいます。

10、ジャック・ベッケル『穴』Le Trou(1960)

穴 LE TROU HDマスターDVD

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最後に紹介するのはこれジャック・ベッケルの『穴』。この映画を見たとき、十代のわたしは脳天を撃ち抜かれたような衝撃を受けました。

この映画が私をフランス映画の虜にしたと言っても過言ではありません。

脱獄映画というのは沢山、世にあるでしょう。

高校生の時にハマった海外ドラマは『プリズン・ブレイク』でしたし、そのあと脱走映画の名作と知られる『大脱走』や『セルピコ』なども鑑賞していました。

それでも私は脱走映画の中で一つ上げなさいと言われたら真っ先にこの『穴』という映画を上げます。

そしてこの映画はフランス映画は少し苦手だという人、白黒映画は古くて見たくないという人をふくめ、すべての人のハートをつかみ、離さない、そんな名作だと私は考えています。

この映画の何がそこまで素晴らしいのでしょう。

派手な演出は一切ありません。すごく渋いといってもよいです。

でもこんなに痺れる映画は、なかなかない

ただ五人の男たちが出口を求めて穴を掘る。その作業の過酷さが「カンカン」という彼らが穴を掘る音のみを伴って、かつ一切のBGMを排した映画の中に描かれます。

そこに渦巻く人間模様、どうしようもない人間の性を描こうとする姿勢、そのまなざしというものがフランス映画の魅力なのではないかとこの映画を見るたびに思います。

私は一人でも多くの人にこの映画を見てほしいと切に思いますし、絶対に後悔はさせないと心から思っています。必見です。

まとめ

長くなりましたが、以上でお勧めのフランス映画10選を終わりたいと思います。

今回の記事では比較的年代の新しい映画を選んだつもりです。

というのもフランス映画は古いものだとなかなか手に入れるものが難しいという場合もあります。DVDBOXを買うというのも一つの道です(ブックレットに書かれている解説なども非常に興味深く有用なものばかりですので)。

東京に住んでいる方はTSUTAYA渋谷店、大阪に住んでいる方はTSUTAYA梅田堂山店が最も在庫が豊富という噂を聞きますね。あとはTSUTAYAの宅配レンタルにもお世話になっていました(結構貴重な作品を借りれることが多いです)。

TSUTAYAは発掘良品の企画が本当に素晴らしく、学生のころやむなくビデオで見ていた作品が多くDVD化されていることに感動を覚えます。映画に詳しくなりたい方は、とりあえず発掘良品の作品を責めるというのも手かと思います。

参考にしてください。

補足*フランス映画をもっと知りたい方にお勧めの本

過去記事で映画に関する本は一通り紹介していますが、最後にフランス映画に興味をもってくださっている人々に向け、フランス映画がもっと楽しくなる本を二冊だけ紹介をしたいと思います。

中条省平『フランス映画史の誘惑』

映画史そのなかでも特にフランス映画氏について知りたい方にお勧めの本。とても読みやすく作品ごとの時代背景がよくわかる一冊かと思います。

フランス映画史の誘惑 (集英社新書)

フランス映画史の誘惑 (集英社新書)

 
トリュフォー、ある映画的人生

「ヌーヴェル・ヴァーグ」について知りたいという方にお勧めの本。変に解説本を読むよりも山田さんの本を読んだ方が面白く、各映画監督について詳しくなるかと思います。とても読みやすい一冊です。

トリュフォー、ある映画的人生 (平凡社ライブラリー (422))

トリュフォー、ある映画的人生 (平凡社ライブラリー (422))

 

書籍は紹介しだすとキリがありませんので、今回はこの二冊に留めておきます。より多くの情報を知りたいという人は以下の記事を参考にしてください。

www.nekopajamas.net

www.nekopajamas.net

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今年は当ブログのほかに、映画だけにトピックを絞ったブログを開設したいと考えています。このブログでも、フランス映画だけでなく様々な国の映画を紹介したいと考えています。多くの映画を、記事を訪れてくださった方に紹介できれば何よりです。

それでは最後まで読んでくださり、ありがとうございました。皆さんに素敵な映画との出会いがこれからも訪れることを心から願っています。

最後まで読んでくださり、有難うございました。

*ホームシアターに興味がある学生さんは以下の記事もどうぞ。

www.nekopajamas.net