The Cat's Pajamas

一人旅好きの趣味ブログ

『大家さんと僕』を読んだらカラテカ矢部さんのファンになってしまった話

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久々にほっこりした良い漫画に出会った

雑談ですが、1か月ほど前『大家さんと僕』という漫画をふっと読みました。

大家さんと僕

大家さんと僕

 

もしかすると以前から、世間で話題の一冊だったのかもしれません。

作者は、カラテカという漫才コンビとして活動されている

  • 矢部太郎さんというお笑い芸人

です。

普段、私はネット漬けの引きこもりですので、年末と災害時以外ほとんどテレビを見ないつまらん人間です。

なのでカラテカの矢部さんのことも、あまりよく知りませんでした。

そのため何も偏見をもつことなく漫画を読むことができたと思います。

でも余計に、この漫画を読み終えた後

なんでこの人芸人になったん?

と素朴な疑問を抱いてしまいました。

というのも

芸人やってるの勿体ないくらい漫画家として才能があるのでは?と驚愕したからです。

つまり文句なしにべた褒めしたい。

そんなレビューを以下つらつらと書いてみたいと思います。

『大家さんと僕』ってどんな漫画?

漫画の絵柄はいたってシンプルです。

出てくる人物もとても少ない、日常系のエッセイ漫画。

主人公は「僕」、この漫画を描いている、矢部さん本人のことです。

「大家さん」は、そんな矢部さんの住むアパートの実在する大家さんです。

そんな大家さんとの出会いを矢部さんは


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と振り返っています。

いつだって身綺麗で、品のある言葉遣いを崩さない高齢の女性。

そんな大家さんとの交流をほのぼの綴った4コマスタイルのエッセイ漫画というのが概要です。

少し浮世離れした二人のやり取り

さて、この漫画の魅力は、何と言っても「僕」である矢部さんと「大家さん」のほのぼのとしたやり取りにあります。

なんだか二人とも少し浮世離れした別世界のキャラクターのように、ゆったりとした独特の世界観で生きているんです。

面白いのは、矢部さんはお笑い芸人なのに、人前で話すのがとても苦手な点です。


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すごく苦しそうに芸人をやっている、日々悩んでいます。

そんな矢部さん、距離が近い大家さんとの関係も、最初はどこか面倒だと疎んじているようなところがあります。

でも相手の気持ちを尊重し、心を開くことに1つ決めるわけです。

その結果、少しずつ大家さんとのやり取りを楽しむようになります。

勿論、大家さんもそんな矢部さんとの生活を、人生の楽しみにしています。

少しずつ深まっていく二人の仲に思わず


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(きゅん)

下手なほのぼの恋愛漫画読むより、ときめいてしまうものがありました(笑)

矢部さんの表現力の高さ

でも、この漫画の凄いところって単にほのぼのきゅんきゅんするってだけじゃないんです。

矢部さんの漫画家としての表現力が異常に高いんですよ。

これはもう才能と呼んでいいのではないか?と思うくらい。

あまりに気になったので調べてみると矢部さんのお父さんは、絵本作家のお仕事をされているそうです。

かばさん

かばさん

 

簡素な絵で、必要最低限に言葉を絞りつつも、読み手を楽しませ、魅了してしまう漫画のスタイルは、もしかするとお父様譲りのものなのかもしれませんね。

特に読んでいてハッと身震いを感じたのが、僕と大家さんが二人でおうどんを食べに行く話です。

少しだけ引用してみたいと思います。f:id:eno1081:20180908021004j:image

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大家さんの一連の台詞が、まるで魔法のように僕をイマジネーションの世界へふっと引き込んでいます

それをものすごくシンプルな漫画で表現してしまっています。

これ簡単そうで、なかなかできないですよ。

それをすごくさらっとこなしてしまってるのが、怖いなと思いました。

イマジネーションと日常

面白いなと思ったのは、本当に魔法のように大屋さんの言葉が機能してる点なんですよね。

先程引用した話もそうなのですが、大家さんの言葉は、まるで時代をふっと超えた場所に僕を誘う、魔法のように描かれています。f:id:eno1081:20180908023438j:image

他にも、大家さんの言葉がイマジネーションを引き起こす合図として描かれる場面が、随所にみられるんです。

それが、すごくシンプルで美しいんです。

そして考えるに、この魔法は、大家さんの言葉に耳を傾ける人間にしか、かからない。

それが漫画の主人公である「僕」なんです。

芸人としての矢部さんはよく知らないのですが、漫画に描かれている通りであれば、どうやら非常に話下手で、芸人としては今一つのようです。

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でも反面、大家さんの話し相手としてはピカイチなわけです。

僕はいつも大屋さんの言葉に、耳を傾ける。

つまり、今はない過ぎ去った時代の残滓を掴もうとする、知ろうとする、そういう好奇心の強さが「僕」にはあるんです。


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僕は、大家さんにいつも質問します。

大家さんを知りたいと思っているから。

相手のことを知りたいと思い、問を投げかける。

それを当たり前にできる人もいれば、出来ない人もいます。

逆に自分の話に相手が耳を傾けることを当たり前だと思い込んでいる人いれば、それは当り前のことではないと常に感謝の心を忘れない人もいます。

多少の脚色は、あるかもしれません。

ですが、漫画の中の二人はいつも互いに対する礼を忘れません。

近すぎず、遠すぎず、ゆっくりと交流を深めていく二人の姿が本当に愛らしく描かれていると好感をもてました。

歳を重ねて生きていくこと

色々とお気に入りのエピソードはあるのですが、もうひとつ私が一番ハッとしたのは「さんぽ」という4コマ漫画です。

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転ぶのは、すごく痛いです。

痛くて怖くて、どうしても避けてしまいます。

でも転べるのは、若さの特権なんだな、とこの漫画を読んで思うものがありました。

転んでも、すぐに立ち上がれて、傷はすぐに塞がり、どんどん前に進める。

「矢部さんはいいわね、まだまだ何度でも転べて」

大家さんの台詞に、老いを重ねることでいずれ「転ぶ」ことが羨ましさの対象となるという驚きを覚えました。

そして転ぶことを「失敗」と準えるなら。

転ばないことを最優先してしまう自分の弱さは、何か大きな成長のチャンスを逃し続けてはいないか、と胸騒ぎを感じるものがありました。

こんなシンプルな4コマ漫画。

でも、メッセージ性は抜群です。

つまり

矢部さん、あなた凄いです…

(放心)

とすっかり魅了されてしまったわけでした。

もしかすると、何てことない内容と思う方もいるかもしれません。

ただ私自身は読んでいて、電子書籍ではなく本で一冊購入すればよかったなと後悔しました。

それほど良いものを読んだという気持ちになれました。

人生の分岐点になる人との出会い

以上のように、漫画をとても気に入ってしまったので、矢部さんの手塚治虫賞の受賞スピーチも拝見しました。

これもとても胸にじんとくるものがありました。

一番は、大家さんがいつも、「矢部さんはいいわね、まだまだお若くて何でもできて。これからが楽しみですね」と言って下さっていたのですね。ご飯を食べていても、散歩をしていても、ずっといつも言って下さるので、本当に若いような気がしてきて、本当に何でもできるような気がしてきて……。

[…]

人生何があるか分からないとよく言いますが、中学生の頃、図書室でひとりで『火の鳥』を読んでいた僕が、いまここにいるなんて思いもよらなかったですし、芸人になって長く経ち、次第にすり減り、人生の斜陽を感じていた僕がいま、ここにこうしていることも、半年前には想像もつきませんでした。
 それでも、あの頃、全力で漫画を読んでいたこととか、芸人として仕事をして創作に関わってきたこととか、子供の頃、絵を描く仕事をする父の背中を見ていたこととか、なんだかすべては無駄ではなく、繋がっている気がしています。それは僕だけじゃなく、みんながそうなのではないかとも思います。

▶口下手なカラテカ・矢部太郎の言葉に会場中が号泣! 手塚治虫賞贈呈式の受賞スピーチ全文 | イベントレポート | Book Bang -ブックバン-

こ、れはっ…

スティーブ・ジョブズ!!!

(え?)

もう完全に矢部さんにジョブズ憑依してますよねこれ、すっかり乗り移ってるよねジョブズだよね???

ということでジョブズのスピーチ引用。

繰り返しですが、将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。

だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない。

運命、カルマ…、何にせよ我々は何かを信じないとやっていけないのです。私はこのやり方で後悔したことはありません。むしろ、今になって大きな差をもたらしてくれたと思います。

ペーパーバック版 スティーブ・ジョブズ 1

ペーパーバック版 スティーブ・ジョブズ 1

 

まさに、これ。

振り返ったときに、矢部さんの人生の点と点が結ばれた、そこに漫画家としての成功があった。

そして大家さんとの出逢いもまた、矢部さんにとって欠かすことができない大きな点だった。

人生はつながってる、運命、カルマ...

(泣)

と感極まって興奮していた私。

これからも矢部さんの漫画を応援したいなと思っていました。

そんな矢先です。

この漫画のモデルとなった大家さんがお亡くなりになったという訃報がtwitterに流れ、話題になっており

非常にショックを受けました。

まさかこのタイミングで、と思うものがありましたが、矢部さんと大家さんが8年以上共に生活してきた中で、矢部さんの漫画が注目され、手塚治虫賞受賞を見届けることが出来た後に、と思えば悲観すべき時期ではないのかもしれません。

大家さんのご冥福を心からお祈りしつつ、もう一度漫画を読み返して、たまにはブログを利用してレビューなどを書いてみるのも良いかもしれないと思った次第でした。

ということで漫画が好きな方や、少し興味がわいたという方は、ぜひ手に取ってほしい1冊です。

きっと『大家さんと僕』を読んだら殆どの人が、カラテカ矢部さんのファンに…いや漫画家矢部太郎さんのファンになってしまうこと間違いなしでしょう。

矢部さんの今後の活躍を期待しています。

ということでおすすめの一冊紹介、最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

大家さんと僕

大家さんと僕