映画と哲学に関するオススメ本6選【上級編】
本や絵画や演劇に比べると、とても歴史の浅い映画という文化。
たかだかた100年の歴史の中で、映画はを先行する様々な学問と結び付けられ、論じられてきました。
今回は
- 映画に関するオススメ書籍ー上級編ー
ということで、映画をより深く知ることができる本を紹介したいと思います。
①ヴァルダー・ベンヤミン『複製技術時代の芸術』
最初にお勧めしたいのがこちら
- ベンヤミン「複製芸術時代の芸術」
です。
映画がまだ無声映画だった時代に書かれた論考。
映画を論じたベンヤミンのこの論考は、同時代のアドルノと比べるとその後のメディア文化の発展を予期するような視野の広さをもって、新しい文化を擁護しています。
実はとても短く、読みやすい論考なので導入としてもおすすめできる一冊です。
ちなみにベンヤミンと合わせて、多木浩二氏のこちらの読本もお勧めしておきます。
ちなみに同時代に書かれたアドルノの映画評はこちら。
ホルクハイマーとの共著で、映画だけでなく当時のサブカルチャー(ジャズを含め、その他のアメリカ文化)を全面的に批判した内容になっています。
こちらもとても有名な一冊ですので、読んでみて損はないと思いますよ。
フランクフルト学派については、こちらの書籍が入門。
②ロラン・バルト『映像の修辞学』
フランスの現代思想家ロラン・バルトの映画論。
バルトは映画は映画に関して、とても興味深い論考を残しているので、引用されることがとても多い方ですね。
とくに読んでおきたいのは「第三の意味」という論考です。
そのほかにも面白いものがあります。
この人は哲学というジャンルに収めるのは、少し違う気もしますね。
『恋愛のディスクール』とか『零度のエクリチュール』とか、休日の昼間に紅茶とかすすりながら、カフェで読むと、文に酔えます。
③アンリ・ベルクソン『創造的進化』・『笑い』
映画と哲学というジャンルにおいては、隅に置くことができない本。
ベルクソンは自分の哲学を語るために比喩的に映画を使用し、批判的見解を述べていくわけですが、決して映画そのものを批判しているわけではありません。
ちなみに薄く読みやすい一冊としては『笑い』が読みやすいです。
映画に関しての記述もありますのでおすすめです。
確か長谷正人氏の本に、この『笑い』を引用した論考があった気がします。
こちらを先に読んでいた方が楽しめるかもしれませんね。
長谷正人氏の文章は本当に読みやすいです。
すっと頭に入ってきて、色々なことがどんどんと知りたくなる魅力に満ちています。
高校生の現代文のテキストに選ばれていたのも頷けるくらい明快です。
あと最近読んだ中でイチオシなのは、広瀬純さんの映画論集ですね。
こんな風に映画を見て、解釈し、文字にすることができたら、と憧れるものがありました。
④ジル・ドゥルーズ『シネマ1』『シネマ2』
映画と哲学といえば、ドゥルーズの『シネマ』でしょうか。
- 1は運動イメージ
- 2は時間イメージ
と扱う題材が異なっています。
とても分厚く、各所で引用されたり論じられたりするこの本は、一度は読んでおきたいと思っても、なかなか手が伸びない本でもありますね。
私もすべてをきちんと理解しているわけではないのです。
が、全体を通し読みした印象としては案外読みやすい、という雑感を抱いております。
哲学というよりも、一つのエッセイとして楽しんでしまってもよいかもしれません。
既存の映画の題名や監督を知らないと難しいと思います。
興味がある方は、とりあえずさらっと全体を通し読みするとよい気がします。
先に此方の本を読むのもおすすめです。
⑤スタンリー・カヴェル『目に映る世界ー映画の存在論についての考察』
読みごたえはありますが、ドゥルーズやベルクソンを読むよりも、ずっと口当たりの良いです。
映画好きによる映画評として消化することができます。
オススメです。
他にも映画を論じる知識人をあげるならば、フレドリック・ジェイムソンの名前が挙がります。
映画を論じるというより映画を材料にするという側面が強いように思われ、個人的にはあまり好きではありませんが。
⑥『映画理論集成』シリーズ
映画理論という視点から映画を読むのであれば、必読本としてあげたいのが『映画理論集成』シリーズです。
有名どころの映画理論が収録されています(シリーズは3冊)
こちらにも目ぼしい理論が紹介されているので、併せて読むのをお勧めします。
アンドレ・バザン『映画とは何か』
こちらも比較的読みやすい本だと思いますので、おすすめに挙げておきます。
「写真映像の存在論」「完全映画の神話」「禁じられたモンタージュ」「映画言語の進化」あたりは有名ですので読んでおいても良いと思います。
前知識がないと興味がわかないと思いますので、山田氏の『トリュフォー、ある映画的人生』もおすすめしておきます。
長編小説を一冊読むくらいの分量があります。
トリュフォーに関する本というのは邦訳のものを含め沢山あります。
でも山田氏のトリュフォー本は、一冊の小説のように情感に満ちており、こちらの涙を誘います。
ヌーヴェル・ヴァーグの精神的父親、アンドレ・バザンに惚れちゃってください。
アンドレ・バザンの解説本としては野崎歓さんの『アンドレ・バザン:映画を信じた男』という本を読むのがおすすめです。
映画史を学びたい人におすすめなのは?
ちなみに映画史や映画理論史を簡潔にまとめた本を探している方には、この本がおすすめです。
これ一冊読めば、大体流れが判ります。
今まで紹介した本の位置づけも、なんとなく頭に入りますし、映画を見るのがもっと楽しくなると思いますよ。
日本人でおすすめの映画本を書いているのは?
日本人で映画に関する本を書かれている方を挙げるならば、蓮見重彦さんの文章は一度読んでみると良いかもしれません。
蓮見重彦氏の映画本は山ほどあるのですが、個人的に好きな一冊が『ハリウッド映画史講義』です。
50年代のアメリカ映画を中心に論じた日本語の本って凄く少ないと思うんですよね。
サミュエル・フラーやサム・ペキンパー、ジョセフ・ロージーなど、個人的にはこの時代の映画監督に興味があるので、とても参考になりました。
蓮見氏の本は、それこそ沢山ありますので、自分の好みにある一冊を見つける楽しさがあると思います。
ただ文体が独特ですので、やや好みは分かれるかもしれません。
もう1冊おすすめはこちら。
ビクトル・エリセやテオ・アンゲロプロスやゴダールやベルトルッチやらへのインタビューが収録されています。
内容もとても興味深く、貴重なものだと思います。
まだ読んだことがないという方は、ぜひ一度お手に取り下さい。
まとめ|映画と哲学に関するおすすめ書籍
ということで、今回の記事では
- 映画に関するちょっとディープな本
をまとめてみました。
色々と面白い本は他にもありますので、ぜひ手に取ってみてほしいです。
それでは、最後まで読んでくださり、有難うございました!
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