The Cat's Pajamas

一人旅好きの趣味ブログ

未知の世界の衝撃*おすすめルポルタージュ本5選

SPONSORED LINK

異国を「読む」おすすめルポタージュ(ノンフィクション)本

今回の記事では、おすすめのルポルタージュ本を厳選して紹介したいと思います。

ルポルタージュといっても沢山の種類がありますので、今回は

  • 筆者は日本人
  • 日本ではなく外国に関するルポルタージュ

という括りにしました。

出来るだけ、どなたにも読みやすくて、読後の衝撃度が高く、時間があればぜひ多くの人に読んでほしいと心から思うものを選びました。

宜しければ、本選びの参考にしてください。

1、松本仁『カラシニコフ』

まずおすすめしたいのがこちら、松本仁さんの『カラシニコフ』という本です。

カラシニコフ I (朝日文庫)

カラシニコフ I (朝日文庫)

 

このルポルタージュの主役は「AK-47」、通称カラシニコフ自動小銃です。

 

f:id:eno1081:20181201204833p:plain

▲(AK-47 - Wikipedia)より引用。

この銃は、世界各地の紛争地やテロ事件で今もなお使われ「史上最悪の大量殺戮兵器」という異名をもちます。

といっても私は無知ゆえに、この本を読むまで「AK-47」という銃がこの世に存在していることすら知りませんでした。

このカラシニコフ自動小銃は

  • 手入れが簡単
  • 軽い
  • 簡単に扱える
  • 丈夫(雨、砂埃にも強い)

という特徴を持ち、優れた自動小銃として、多くの紛争地帯で今もなお利用されています。

特筆すべきは、この小銃がアフリカ各地に多くの「子ども兵」の存在を生み出したことでしょう。

AK47は機関部に多少のゴミや火薬かすが残っていても支障なく作動するように設計されている。

それが、未熟な子ども兵にも銃の操作を容易にした。

逆に、そんなAK47があったからこそ子ども兵が生まれたともいえる。

モザンビーク、ソマリア、コンゴ、スーダン……。

子ども兵が生まれた国の銃はたいていAKだった。

ゲリラ兵により、家を奪われ、家族を殺された幼い子供たちがいかに、銃を持たされ、兵士として洗脳されていったのか。

その当時「子ども兵」だった人々のインタビューを通して語られる、生々しいゲリラの実態は、想像を絶するものです。

村を焼かれ、弟を殺され、兵士にレイプされ、そしてAKを渡され、3人の人を殺した、とインタビューで答える少女の年齢は、当時11歳。

その内容の凄惨に加えて、この本の特筆するべきところは、この小銃の設計者カラシニコフ(2013年没)のインタビューが掲載されている点でしょう。

あなたのつくった自動小銃が、世界各地で混乱と悲劇を引き起こしている。

それについてどう考えるかーー。

私の質問に、彼はちょっといいよどんだ。

「そういう話は私も聞いている。悲しいことだ。だが、それは銃を管理する者の問題ではないか。米国のM16やベルギーのFALが流出することだってある。

私はナチスドイツから母国を守るため、よりすぐれた銃をつくろうとしただけだ」

AKという自動小銃をテーマに、現地に暮らし内線を経験した人々のインタビューと、開発者のインタビューのコントラストを際立たせ、多くを語らずとも読者に考える余地を与えている。

本の構成が、非常に素晴らしいと感じましたし、記述も詳細かつ、わかりやすいため、前知識のない読者でも、読後はかなり多くのことを考えさせられる内容になっていると思います。

非常にお勧めの1冊です。

▶カラシニコフ I (朝日文庫)

※ちなみに「子ども兵」に関しては、瀬谷ルミ子さんの『職業は武装解除』を一読することをおすすめします。

あくまでご本人の自伝ですので、今回ルポルタージュとしては紹介しませんが、非常に素晴らしい本だと思いました。

自分の人としての生き方が情けなくなってしまうほどに、瀬谷さんという女性のあり方に感銘を受ける本です。

ぜひ多くの人に一読してほしい本の1つです。

職業は武装解除 (朝日文庫)

職業は武装解除 (朝日文庫)

 

2、山際素男『不可触民~もうひとつのインド~』

次に紹介するのがこちら、山際素男さんの『不可触民』という本です。

不可触民?もうひとつのインド? (光文社知恵の森文庫)

不可触民?もうひとつのインド? (光文社知恵の森文庫)

 

「不可触民」という言葉を、今まで聞いたことのある人も多いと思います。

簡単に述べると

  • インドのカースト制度(バラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャ、シュードラ)の外側にいる人々

のことです。

私も、高校生の頃に世界史の授業で習った記憶があり「不可触民」という用語としては知っていました。

が、この本を読んで、用語としてそれを知っているだけでは、何も知らないに等しいと大いに反省しました。

まず、冒頭。

この本の作者である山際さんはインド留学中、乗っていた車が、不可触民をはねてしまうというハプニングに遭遇します。

突然、どすっ、という鈍く気味の悪い衝撃音と同時に、ふわっと白い大きなものが宙に舞い、ゆるやかな放物線を描いて前方に落下した。

車はブレーキを軋ませた。

と、運転手の隣で、後方を凝視していたK氏は、短く一言「チョロ(いっちまえ)」と命じた。

道の真ん中に長々とのびている農夫の姿はみるみる遠のいていった。

「ストップ、ストップ!」

あわてて叫ぶわたしを、彼は冷たい笑みで黙殺した。

運転手は、ペロリと赤い舌を出し首をすくめると、アクセルをぐんと踏み込んだ。

とてもノンフィクションとは信じがたい、強烈なひき逃げなのですが、後日さらなる衝撃が、山際さんを襲うことになります。

だが、あんな悪質なひき逃げが世間に知れぬはずはない。

直ぐ新聞に載り、司直の手がのびるだろう、というわたしを、K氏は複雑な眼で見つめた。

「そんなことはないよ。轢いたのはまぎれもなく”アンタッチャブル(不可触民)”なんだから。

あんたもこのことは黙っていた方がいい」

納得できるはずのない山際さんは、自分に対して親身になってくれたインド人の友人、大学教授、知人の高級官吏など、様々な人に相談し、訴えます。

でも、みんな呑気な知らん顔。

「不可触民だから、仕方ないさ」「気にしなきゃいいんだよ」

愕然とした山際さんは、この出来事を

これが、わたしのインドにおける”原体験”であり、躓きの元だった。

と振り返っています。

さて、この本の内容はその後、7年ぶりにインドに渡った山際さんが、不可触民を相手にインタビューを試み、その記録をまとめたものになっています。

※過激な描写を読むと、気分が悪くなるという方もいらっしゃると思いますので、具体的な内容は控えさせていただきます。

一言でまとめると、不可触民の方々の証言は、文字を追うだけでまざまざと光景を想像し、血の気が引くようなものばかりです。

カースト外の不可触民は、人間ではない。

本当にそういう認識なんですね。

或る種、第二次世界大戦時のナチスドイツによるユダヤ人虐殺に近しいものを感じました。

状況は異なりますし、政府の意で虐殺されているわけではありませんが、人間としてみなされず、上位階級の支配層によって、気晴らしに殺され、犯され、焼かれ、虐げられれる、それが生まれたときから定められていて、死ぬまで覆せない。

話は変わりますが、この夏、アウシュヴィッツ収容所に足を運んだ際、展示内容があまりに陰惨で、途中、回るのが苦しくなるほどだったんです。

人間の嗜虐性は、時に悪魔としか評せないほど残忍だと青ざめるものがあったのですが、不可触民に関しては20世紀、いや21世紀今もなお続いている制度だと思うと、絶句するしかありません。

インド人が残虐だ、というような短絡的な話では決してないのです。

人間が公に認められた既存の文化的慣習に組み込まれた時、それに疑問を抱くことがどんなに難しいか改めて考えさせられる1冊でした。

ぜひ一読をおすすめします。

▶不可触民

3、早坂隆『ルーマニア・マンホール生活者の記録』

次におすすめするのは『ルーマニア・マンホール生活者の記録』という本です。

ルーマニア・マンホール生活者たちの記録 (中公文庫)

ルーマニア・マンホール生活者たちの記録 (中公文庫)

 

この本の主役となっているのは、ルーマニアの路上生活者たちです。

ルーマニア国内の路上生活者の数は4000人以上とも一万人以上とも言われている。

孤児院で暮らす孤児の数は四万人以上。

ルーマニアが「ヨーロッパのインド」と呼ばれる原因の1つである。

ルーマニアでは、1960年代から80年代にかけて24年間、ニコラエ・チャウシェスクという政治家が独裁的権力者として君臨していました。

彼がどんな指導者かということは

チャウシェスクはヒトラーのカリスマ的指導方法に強い関心を抱き、常に研究していたという。

ナチスのオリジナルフィルムや1936年に開催されたベルリンオリンピックの開会式の演説テープ、同じくベルリンオリンピックの記録映画『民族の祭典』等を使って、ヒトラーの演説方法、仕草、視線、声音まで徹底的な分析を重ねた。

という著者の記述や

80年代、ヨーロッパでカラーテレビ放送がないのはルーマニアとアルバニアだけだった。

しかし実際にはチャウシェスク一家だけは専用のカラーテレビ放送システムが存在していた。

一方国民は政府に従属した代わり映えのしない白黒放送を見ることができるだけだった。しかも放送は1日2時間、夜の8時から10時の間だけ。

その番組はほとんどは人民の父であるチャウシェスクの演説と1日の足跡で、ニュースは西側の政治スキャンダルや汚職に関するものばかりだったという。

という記述を読んでもらえば、想像に容易いかと思います。

結局はルーマニア革命により失脚、1989年12月25日に革命軍の手によって、処刑されました。

その無残な独裁者の最期の姿と狂喜乱舞する国民の姿は国営ルーマニアテレビにより全世界へと放映され、衝撃を与えた。

血の流れる様までが鮮烈に世界へと発信されたのである。

テレビメディアにのった最初の革命であった。

(私はこの時、まだ生まれていないので情報としてしか知りませんが)当時、この処刑は、全世界に衝撃を与えたそうです。

さて、無事に革命を達成したルーマニア。

ですが実際、その後の国民の生活水準が向上することはありませんでした。

ルーマニアとモンゴルにはいくつかの共通点が見られる。

両国とも共産主義、社会主義国家としての歴史を持ち、1989年末に資本主義へと転換した。

しかし、それ以降の経済はさらなる混乱を招き、多くの失業者を生んだ。

自由主義経済に適応できない親が、生活苦から子供を捨て、孤児の数はさらに捨てる。

首都ブカレストに捨てられた孤児たちの行きついた先、それがマンホールなのです。

この本では筆者が、ルーマニアのマンホールで生きる人々と一緒に生活を共にし、少しずつ関係を築きながら、聞き取った彼らの言葉が記録されています。

そして、彼らと対峙し、筆者が感じたことが時折、率直に書かれていて、此方の胸を打つものがあります。

人は人を見た目で判断する。

着ている衣服、住んでいる場所、そして肌の色。

その逆に眼に見えない部分は悲しいくらい感じることができない。

本当は肌の暖かさも、その下を流れる血の色も、同じだというのに。

ルーマニアという国について、あまり知らないという方も多いと思いますが、この本は非常に読みやすく、また読後も非常に記憶に残る内容だと思います。

気になるという方には、ぜひ手に取ってほしいです。

▶ルーマニア・マンホール生活者たちの記録

※また私自身、ルーマニアという国に関しては、米原万里さんの『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』という本を読んで興味をもつようになりました。

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

 

私の大好きな1冊で、別記事でもおすすめしていますので、興味がある方はぜひ参考にしてください。

▶旅&読書好きにオススメ*世界が広がる旅本8冊

www.nekopajamas.net

 4、高野秀行『アヘン王国潜入記』

 次におすすめしたいのはこちら高野秀行さんの『アヘン大国潜入記』です。

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

高野秀行さんの本に関しては『恋するソマリア』と『謎の独立国家ソマリランド』いう本を、以前「旅&読書好きにオススメ*世界が広がる旅本8冊」という記事で紹介させていただきました。

個人的には、ソマリアに訪れる前に高野さんが書かれた、この『アヘン王国潜入記』もとてもおすすめです。

高野さんは、世界の辺境どこにで訪れてしまう冒険家(兼ライター)の方です。

私は学生時代に探検部という時代ばなれした部に所属していた来歴から「未知の土地」に限りないあこがれを抱いていた。

ところが実際には、地理的な探検は私がこの世に生をうけた自分にあらかた済まされており、残っているのは落ち穂拾い的な作業だけだった。

そんな高野さんの心を長年捉えて離さなかった場所。

それが、ゴールデントライアングルーインドシナのタイ、ラオス、ビルマの三国が接するあたりに広がる「麻薬地帯」でした。

これこそ外部の人間が絶対に足を踏み入れられない秘境!と考えた高野さん。

さらには

ゴールデン・トライアングル内の村に滞在し、村人と一緒にケシを栽培し、アヘンを収穫してみよう。

そのうちにそこに住む人々の暮らしぶりや考えていることが自然にわかるにちがいない

と考え、実際に行ってしまうんですね。

ということで、この本には単身7か月、ミャンマー(ビルマ)北部の反政府ゲリラが支配するワ州というところで高野さんが生活した記録が記されています。

と書くとなかなかに物騒ですが、この本を読んで感じたのは、村人にとってケシの実を育てるのは純粋な農業なんですよね。

(そこがまた面白いところなのですが)

なので『謎の独立国家ソマリランド』と比較すれば、こちらは非常に地味な内容だとも思います。

何にもない小さな農村に滞在して、村人と交流しながら、時にはアヘンを吸いつつ(!)ひたすらにケシの実を育てる高野さんの7か月。

でも、この地味さが魅力なんですね。

可能な限り現地の生活に根を張って、彼らの目線で世界を覗き見ようとする高野さんが、この経験を言語化するために7年もかけたというのも、何だか頷けるものがあります。

文章も非常に読みやすく、所々に読者を楽しませようとする心遣いが垣間見られるのも高野さんの本の魅力の1つです。

気軽な気持ちで、ぜひ手に取ってほしい1冊です。

▶アヘン王国潜入記

5、国分拓『ヤノマミ』

最後に紹介するのは、こちら国分拓さんの『ヤノマミ』という本です。

これは、未知の世界を覗き見るという意味では、なかなか衝撃度の高いルポルタージュでした。

ヤノマミ (新潮文庫)

ヤノマミ (新潮文庫)

  

この本の主役であるヤノマミというのは、ブラジルとベネゼエラに跨る広大な森で生きる先住民のことです。

推定2万5千人から3万人が200以上の集落に分散して暮らしている彼らのドキュメンタリー番組を制作するため、筆者は2007年から4回にわたってアマゾンの奥深くで、ヤノマミ族と同居しました。

どこかで誰かが何かを言う。

誰かが答え、誰かが笑う。

アハフー、アハフー。何度も響く。

何を話しているのだろう。

それ以上に、声はどこから聞こえてくるのだろう。

僕は声の方向を探してみる。

しかし、左なのか右なのか、近いのか遠いのか、男の声なのか、女の声なのか、まるで分らない。

ただ声だけが風に揺れている。

アハフー、アハフーと揺れている。

生まれたままの姿で寝て、食べて、情を交わして、子を産んで、そして死ぬ。

今のわたしたちの生活から遠く離れた場所で、けれども同じ時間の流れの中に、ヤノマミの生活が確かに存在していると思うと、なんだか途方もない気持ちになります。

原初の人々のその暮らしは驚きの連続だった。

強力な仲介者の助けを得て、事前に同居の了解を得ていたにもかかわらず、目の血走った男に「お前たちは敵なのか、災いを持ってきたのか、敵なら殺すか」と凄まれた。

シャーマンは真っ黒な幻覚剤を吸って、夜な夜な点の精霊と交信を続けた。

大人たちは大量の獲物を僕らの目の前で捌き、解体に集まってきた子どもたちは、腹から出された胎児で遊んでいた。

僕たちは、ただ、圧倒されるばかりだった。

個人的に衝撃度の高かったのでは、出産のシーンでした。

ヤノマミの世界では、母親は胎児を生んですぐに

  • 生かして人間にするか
  • 殺して精霊にするか(天に送るか)

というどちらの選択も許されます。

活かすも殺すも、母の自由。

ですから、生まれた赤ん坊を抱きあげることなく、首を絞めて殺すということもあるのです。

これがヤノマミの世界の倫理なのです。

また性関係は(女の自由意思で)誰とも自由に行うことができるという点も、興味深かったです。

一度読むと目を見張る内容ばかりで、衝撃度が高く、一気に読んでしまえるかと思います。

非常にお勧めの1冊です。

▶ヤノマミ (新潮文庫)

まとめ

ということで今回の記事では、私たちがあまり知らない世界に関するルポルタージュの中からおすすめのものを5冊推薦させていただきました。

紹介したのは

の5冊でした。

また今回は

  • 海外事情を扱った内容
  • 筆者が日本人

ということで限定させていただきましたが、括りを広げれば面白いルポルタージュは沢山あります。

例えば、最近読んだ中では、2015年にノーベル文学賞を受賞したベトラーナ・アレクシエービッチ『チェルノブイリの祈り』という本が非常におすすめです。

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫)

 

翻訳本ですが、第二次世界大戦の被爆国であり、福島原発事故を経験した日本人だからこそ、この本を一読する意味は非常に大きなものなのではないかなと思います。

ぜひ一読してほしい一冊です。

ルポルタージュに関しては、また別の括りでおすすめ記事を書く予定です。

また私自身も知らない本が、山ほどあると思いますので、今後とも素敵な本との生活を楽しみにしながら、読書に励んでいきたいと思います。

それでは、最後まで記事を読んでくださり、ありがとうございました!

本に関する別の記事

www.nekopajamas.net

www.nekopajamas.net

www.nekopajamas.net