地政学のおすすめ入門書5選【読みやすい&ゼロから分かる本】
今回の記事では
- 地政学
のおすすめ入門書をまとめたいと思います。
「地政学、何ソレ?」と思う人もいらっしゃると思うので、簡単に説明すると
国家間の対立を地理的な条件で説明するのが地政学
です。
例えば、ロシアという国があります。
ロシアはすごく寒い地域なので、港が凍ってしまって外に出られないという弱点があります。
なので
- 不凍港を求めて南下する
という特徴をもっています。
南下を進めるロシアと衝突する国が領土争いに発展していく、これは世界史でよくみられるパターンです。
逆にロシアは、あまりに寒いので諸外国からの軍事攻撃に強いという特徴もあります。
ナポレオンもヒトラーも、ロシアの厳しすぎる冬将軍によって撃退されました。
国の位置関係は、変わりません。
なので、こういった特徴も基本的には歴史を通して変わらないんです。
だから似たようなことが世界史では繰り返されていますし、地政学が解れば今後の世界の動きも読みやすくなるというわけです。
ということで、興味がある人にはぜひおすすめしたい地政学。
その入門書として誰でも読みやすい本を以下、紹介してみます。
サクッとわかるビジネス教養 地政学
最初におすすめするのはこちら
- サクッとわかるビジネス教養 地政学
です。
2020年に発売された本で、内容も新しい。
かつ、カラーイラストでわかりやすい説明が豊富なので、最初の一冊に最適です。
私は、この本を紀伊国屋で見つけて10秒くらい立ち読みして、購入を即決しました。
(それくらい読みやすい本)
地政学の知識は何もない状態でしたが、この1冊だけで地政学の基本のキの字を理解することができたように思います。
例えば、地政学の基礎的概念に
- シーパワー
- ランドパワー
というものがあります。
「シーパワー」は海で囲まれた海洋国家、日本やイギリス、アメリカなどを指します。
「ランドパワー」はユーラシアの大陸国家、ロシアや中国、ドイツが主になります。
大きな国際紛争は、基本的にこの
- シーパワーとランドパワーのせめぎ合い
によるものだ、というのが地政学的な考え方です。
この本ではシーパワーとランドパワーの攻防を含め、各国をコミカルなイラストで説明しているため内容が頭に入ってきやすいです。
簡潔な地図も豊富で、重要な点だけまとめてあります。
この本を読むことで地政学の基礎的な知識は手に入りますし、隣国の中国やロシアといった大陸国家の原理が理解できるはずです。
ちなみにロシアにおける北方領土やウクライナの重要性も、わかりやすく解説されていました。
地政学に興味があるという方は、迷わず手にとってほしい最初の1冊です。
マンガでわかる地政学
次におすすめするのは
- マンガでわかる地政学
という本です。
タイトルは「マンガでわかる~」となっていますが、割と文章が多い本となっています。
先ほど紹介した「サクッとわかるビジネス教養 地政学」よりも一歩踏み込んで、各国の地理的条件について解説されている本です。
(漫画というより本と読んだ方が語弊がないと思う)
例えば、ポーランドという国は
- ドイツとロシアの板挟み
といえる位置にある国です。
周辺の強国に分割されて、地図上からその姿を消したこともあるという悲劇の歴史をもつ国。
ヨーロッパ半島の付け根にあるからこそ
- 敵の通り道になる
- =侵入されやすい
というのがポーランドの特徴です。
つまり大陸側から侵攻されたら、真っ先に被害を受ける悲劇的なロケーションなんですよね。
さらにいえば
- 山脈
- 大河
といった自然国境がありません(=大草原しかないので、すぐ敵が侵入してしまう)
この点、島国の日本(=周りが海で敵の侵入を受けにくい)とは正反対です。
そんなポーランドはEUを仕切るドイツと、ロシアが接近するのを最も恐れているので
- NATOの中でも親米
という立ち位置になります。
こんな感じで、各国の地理的条件や現在の状況を1つずつ解説されています。
途中でマンガが挟まっているので集中力も持続しやすいです。
各国の状況が整理されていて読みやすく、付録で地図もついてくるのも◎でした。
学校では教えてくれない地政学の授業
次に入門書としておすすめするのは
- 学校では教えてくれない地政学の授業
という本です。
この本は「日本一わかりやすい」と書いてある通り、地政学を知らなくても誰でも読みやすい一冊になっています。
構成としては
- 進行役
- 生徒役
の二人が対談している内容を記録した講義モノです。
文字も比較的大きく、会話を追っていくながれなので途中で読めなくなるという心配もないと思います。
「地政学とは何か?」という問いから始まり
茂木「猫は習性として、自分が一番気持ちのいい場所を探して座るんです。つまり自分の縄張りです。猫はゆっくりしたいときに自分の近くに来られると不機嫌になるんですよね。これは地政学的な動きで、人間も同じなんです」
砂山「動物の縄張りと同じように、国っていうのも縄張りがあると」
茂木「その縄張りを、領土とか、領海とか、勢力圏とかいうわけです。個人だったら引っ越しできるけれども、国っていうのは引っ越しできません。中国の北にはロシアがあるんですよね。必ず。そうすると、その国がどこに位置するか、ロシアと中国はお互いに困った隣人をどうやってコントロールするかっていうことを考えるんですよね。というふうにして、いろんな外交政策や、あるいは場合によっては戦争ということにつながっていくと。それを理論化しようという学問が地政学です」
といった具合に解説が進んでいきます。
「学校教育で何故、地政学を扱わないのか」といった点についても、この本ではわかりやすく解説されていました。
とにかく読みやすい一冊なので、入門書としておすすめの一冊です。
ゆげ塾の構造がわかる世界史
地政学ではなく、世界史のマンガになりますが
- ゆげ塾の構造がわかる世界史
もおすすめします。
上記に挙げた地政学の入門書を読みつつ「各国の地理的条件を確認しながら、世界史を復習したい」と思った人におすすめです。
このマンガは
- なぜ中東は紛争が絶えないの?
- フランスが原発依存率が高い理由は?
- アメリカが銃の規制を進めない理由は?
- EUはなぜできたの?
といった現代につながる疑問に、歴史を紐解きながらわかりやすく答えているのが印象的でした。
各国、女の子キャラで擬人化されていますが絵もキレイなので、普段マンガを読まない人でも抵抗なく読めると思います。
基本の流れが、マンガなので単純に読みやすいです。
今まで「?」と気になってたことも
- スッと頭に入りやすい
ですし、マンガ学習は効率がいいなと実感するものがありました。
個人的には、フランスに原発が多い理由が気になってたので「なるほど」と思うものがありました。
エネルギー供給を他国に依存する恐ろしさを過去の失敗から学んでいたわけですね。
ちなみに2022年2月における対ロシアのSWIFT排除に当初は反対を示していたのが、ドイツとイタリアとハンガリーだったのもあまりにわかりやすい構図でした。
つまり、見事にロシアの天然ガス依存によって、首根っこを押さえられてしまったわけです。
この点、日本も他人事ではありません。
ロシアへの天然ガス依存という心配はありませんが、原油の9割を中東から輸入しています。
それらを運ぶ海上交通路は限られているのですが、まさにその通路に位置する南シナ海に中国が人工基地を建設しているという事実を、ウクライナ侵攻以後の世界情勢を追いながら改めて恐ろしく感じました。
蛇足が増えてしまいましたがこの本(漫画)は世界史好きな人にもトリビア的な要素が多く、読み物としてシンプルに面白い内容だと思います。
さくっと世界史を復習しながら、新しい気づきも得られるなと感じました。
Kindle Unlimitedの読み放題対象(初回1か月無料)なので、こちらの本とセットで読むのがおすすめです。
戦略の地政学 ランドパワーVSシーパワー
最後におすすめするのは
- 戦略の地政学
という本です。
今まで紹介した本の中では、一番分量が多くて手堅い教科書的な一冊になります。
冒頭を少し引用すると
ただ、確かなのは、後世の歴史家は、現代を平和な時代と呼ぶことは決してないだろうということだ。確かに近い将来、世界を巻き込む大戦争が起きる気配はまだない。平和と戦争のはざまにある不確実な時代が現代である。
1990年代初期、東西冷戦の終結によって、旧ソ連を中心とした東側陣営はあっというまに崩壊した。独裁国家の連帯など、ガラスのモザイクのようなものでしかなかった。
一方、米国は冷戦後も唯一の超大国として、一極支配の頂点に立った。そのため、西側陣営は崩壊することはなく、20年以上にわたって連帯を続けてきた。ところが、二一世紀に入って、米国は対テロ戦争と中東への軍事介入が長期化したことによって疲弊し、世界の警察官の役割を返上することを公式に宣言するまでになった。米国の力が弱まり始めたのである。その結果、冷戦崩壊による第二の衝撃波が再び押し寄せてきている。西側陣営の崩壊である。
といった感じです。
「です・ます調」ではありませんし、イラストや地図なども今まで紹介した「THE入門書」と比較すると少ないです。
が、解説書として水準が高く、文章も明快だと思いました。
参考文献も豊富に記載されているので、学習を深めたい人はここから気になるものを読んでいくと良いかもしれません。
+α 地政学をもっと楽しみたい人に
おすすめ入門書とは別に
- 地政学の本
をさらに読みたい人向けに、自分が読んだ本のレビューを簡潔にまとめておきます。
良かったら選書の参考にしてください。
茂木誠 米中激突の地政学
こちらの本は2020年8月に発売された本なので、話題が新しく
- コロナウイルス
- 香港国家安全維持法可決
に関しても言及があります。
全体としては、2018年トランプ政権下のマイク・ペンス副大統領の演説を引用しながら、米中二大覇権国の衝突は今後さらに激化するという主張で貫かれています。
米中対立に興味がある方におすすめです。
こちらの本も2019年に書かれていて、セットにしやすいと思います。
茂木誠 世界史で学べ!地政学
茂木誠さんは地政学入門書が多いので、手に取りやすいですね。
が、文章がたまに用語の羅列(?)のように感じて、読みにくいと感じることがあります。
この本は特にそれを感じたので、おすすめ入門書にあげるのを控えました。
図解版にも目を通しましたが、こちらの方が解りやすいと思います。
好みもあると思いますので、参考までに。
佐藤優 大国の掟「歴史×地理」で解きほぐす
2016年に書かれた本です。
地政学を知らない読者にも手引きがあり、かつ佐藤優さんならではの面白さがあると思います。
入門書としておすすめするのは語弊がある気がして止めましたが、読んでいて知的好奇心が高まる一冊として推薦したいです。
「です・ます調」で、内容も丁寧、比較的読みやすいと思います。
「Kindle Unlimited」の読み放題対象(初回1か月無料)だったので、ラッキーでした。
※追記:ただ佐藤優氏は、ロシアのウクライナ侵攻に関しては親露的なスタンスを感じ、なんとも言えない部分があるなと個人的には思っています(彼の経歴を考えるに仕方ない部分もあるとは思うけど…)
佐藤優「もしもアメリカがトランプ大統領のままなら、ロシアのウクライナ侵攻は起こらなかった」
北岡伸一・細谷雄一(編)新しい地政学
今ちょうど読みかけの本です。
地政学をもっと知りたいと思って手に取ったのですが、ちょっと読むのに時間かかりそうだな、と心配になっています。
また、ちゃんと読み終えたら加筆修正させていただきます。
※補足:すみません、結局最後まで読みきれずに図書館に返却してしまいました…。
まとめ|地政学ブームの波に乗れ!?
ということで今回は
- 地政学のおすすめ入門書
をまとめてみました。
地政学は、戦後長らく日本から遠ざけられてきた学問ですが
- ここ数年、関連本が激増
しているようなので、新聞や雑誌、メディアの特集などで見かける人は多いと思います。
地政学というと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、単純に
- 世界史
- 地理
が好きな人におすすめですし、それこそ単なる海外旅行好きにも興味をもちやすい学問だと思います。
また今後の世界情勢は、自分の生活に大きく影響してくる気がします。
私自身もう少し地政学の本を読みたいですし、まだ気になる本があるので、このページの内容も加筆修正していく予定です。
限りなく初学者という立場から、地政学を知らない人にも読みやすい入門書を紹介できていたら幸いです。
こういった本は著者によって主張や立場も異なるので、より幅広く手に取って自分なりに考えていけたらなと思います。
とりあえず1冊選ぶなら、最初に紹介した
がおすすめですね。
それでは、少しでもこのページにたどり着いた方の読書の参考になれば幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
こんな記事もあります
以下の記事では、おすすめのルポルタージュを紹介しています。
例えばウクライナ侵攻に関して言えば、この記事でも少し紹介した「チェルノブイリの祈り」という本を思い出すものがありました。
スベトラーナ・アレクシエービッチというノーベル平和賞を受賞しているウクライナ人作家の作品です。
地政学や歴史を一種の勉強として学ぶのも手ではありますが、こういった作品から個人の声を聞くというのも選択肢として強くおすすめしたいなと思います。
よろしければ参考にしてください。
コメント