岡田悠「0メートルの旅」感想|「旅」を愛する、すべての人を笑顔にする旅行記

つい1時間ほど前に、読み終えた本。

あまりに面白くて、思わずブログに何かを書きたくなってしまいました。

紹介するのは2020年12月に発売された、岡田悠さんの『0メートルの旅』という旅のエッセイ本。

「旅行」できなくなった世界で、

「旅」を愛する、すべての人へ。

というキャッチコピーに惹かれて購入しました。

以前、noteで公開されていたイラン旅行記を読んで「面白いな」と思った記憶があり、今回たまたまレビューを見かけて興味が湧いたので本屋で探して即買いしました。

経済制裁下のイランに行ったら色々すごかった(https://note.com/hyosasa/n/n73de45cf580a)

装丁はとてもオシャレな感じ。

海外旅行、国内旅行、近所、と16の話が三章に分けられていて一つの話が短いこともあり、読みやすいです。

なんといっても、読み始めたらノンストップ級の面白さ。

かつ「この旅を終わらせたくない」と酒のツマミのようにチビチビと読み進めたくもなる、そんな魅力的なエッセイでした。

本の面白さを語るって、とても難しいです。

「とにかく読んでみて」としか言いようがない。

それでもあえて語ってみると、この本は、面白い旅行記の特徴を全部もってると私は感じました。

そして思いました、素敵だなと胸が熱くなる旅行記の特徴って一体何なんだろうって。

目次

「酔狂な旅人」という主人公

まず人それぞれ好みがあると思うんですが、私は

酔狂な旅人

にすごく憧れというか魅力を感じます。

酔狂とは

1 好奇心から人と異なる行動をとること。物好きなこと。また、そのさま。酔興。

2 (酔狂)酒に酔ってとりみだすこと。

何をもって「酔狂」というか、それも人それぞれ解釈があると思うんですが

圧倒的な好奇心

が基盤にあり、かつ「ぶっ飛んだ発想力」をもって淡々とそれを実現してる旅好きさんだと私は思っています。

具体的には「そこに注目するの?」「それマジでやるの?」「どういう発想と執念なの?」みたいな独自の旅のコンセプトや視点をもっている人。

そして笑っちゃいたくなる拘りをもってそれをガチで完遂してしまう人です。

例えば、旅人のバイブルとも歌われる沢木耕太郎さんの『深夜特急』ですが、これも

ユーラシア大陸をバス移動のみで横断する

という謎のポリシーを貫いて(理由:地球の大きさを体感したいから)1年以上の放浪をした記録なんですよね。

高野秀行さんの本も「そこまでやるのか」という発想と行動力に満ちてますよね。

「0メートルの旅」の著者である岡田悠さんも、そういう面白さがあります。

例えば、南アフリカに絶滅危惧種のツバメを探しに行く話、とか。

海外旅行記も面白かったのですが「一週間、江戸時代の古地図だけで生活しよう」と決めて近所を散策する話とか。

ナナメ上の発想力、良い意味でハチャメチャ、なんというか酔狂。

すごく羨ましいなと思います。

本の中で岡田さんは

どれだけ通学路を厳しく指導しても、子供が道草をするのを止めることはできない。細い路地、塀の隙間、ちょっとした段差。そんな少しの手がかりから、子どもたちは巧みに道草の冒険を創り出してしまう。

旅も同じだ。

たとえ遠くに移動できなくても、旅人から旅を奪い去ることはできない。想像力を膨らませること、些細な巡り合いに興味をもつこと。そういうことを繰り返していれば、近所にだって旅は創れる。

と書いていました。

最後にコロナ禍の自室でエアロバイクにグーグルマップのストリートビューを独自連動させて日本横断する、という話もあったのですが、まさに発想の勝利ですよね(笑)

そして、それを本気でやる。

面白い旅行記(や体験談)を書いてる人って、辺境に行ってるとか何十カ国も旅してるという行動力だけでなく、つくづくその人の発想や視点そのものに独自の魅力があると私は思います。

コロナで楽しみが奪われてしまったと意気消沈して諦める前に、脳味噌フル回転で発想力の限界に挑んでいる旅好きもいるのだなと反省するものもありました。

まさに0メートルの旅。

その人次第で、今ここからでも新奇のもの開拓し、楽しむことはできるのかもなと前向きな気持ちにさせられました。

文章からにじみ出る「ユーモア」と「キャラクター」

素敵な旅エッセイって沢山あると思うんですが、片桐はいりさんの「グアテマラの弟」という本が私はとても好きなんです。

片桐はいりさんは、旅マニア。

というわけでは全くなく、これは弟に会うために不慣れな旅にぎこちなく乗り出した片桐さんの異国体験記です。

この本、語り手である片桐はいりさんのキャラクターがにじみ出ているというか、なんだか映画を見てるような気分で旅の疑似体験ができたエッセイなんですよ。

やっぱりユーモアと愛嬌って最強なんじゃないか、と。

読んでて応援したくなる旅の語り手っていいですよね。

本の中で旅している語り手の人柄に魅力や親近感を覚えると、ぐっとページを捲るのが楽しくなるし、一緒に旅をしているような心地よさもある。

「0メートルの旅」の岡田悠さんの文章も同じ魅力があるというか。

至るところにユーモアがふんだんに散りばめられていて親近感を覚えやすく、突飛な行動にも所々クスクス笑ってしまいました。

一番笑ったのは、チェーン寿司屋の無料クーポンで提供されるネタをexcelで三年間記録し続けてネタ予想を試みた話。

ちょっと爆笑してしまって。

オモコロのAruFaさんとか大好きなクチなので、単純にツボだったのかもしれません。

ただゲラゲラ笑えるという感じではなく。

真面目な話、各エピソードの起承転結も小説のように巧みにさりげなく練られていて、じんと感動する文章もありました。

出来事を単なるハプニングで終わらせずにまとめる著者の考え方や文章力に、大きな魅力を感じました。

「旅のハプニング」という麻薬

旅のハプニングって怖いんですよね、変な中毒性があるから。

できたらハプニングには遭いたくない。

でも、記憶に残ったり高揚したりするのは意外とハプニングが多かった旅ばかりなんです。

心臓がバクバクするような新しい出来事を心の奥底で求めている、そう認めざるを得ない。

だから旅行記を読んでいても予定調和的な旅ではなく、その人が体験した独自のハプニングや出会いを共有したいという気持ちが皆どこかにあるのではないでしょうか。

「0メートルの旅」は、まさにそういう旅エピソードのオンパレード。

まず海外旅行の章が

  • 南極
  • 南アフリカ
  • モロッコ
  • イスラエル
  • パレスチナ
  • イラン
  • ウズベキスタン
  • インド

というラインアップなので「こりゃハプニングしかないだろ(笑)」という感じ。

一番気に入ったのは、はじめての海外ひとり旅でモロッコを選んで旅したエピソードです。

「はじめての海外一人旅でモロッコチョイスって…」と不安を感じた初っ端からリュックを盗まれ荷物を失って途方に暮れてしまう岡田さん。

でも現地の方に助けられて、ちゃっかりと同居生活を送ることに。

そこでお世話になったハムザという青年とのエピソードも、印象的でグッとくるものがあります。

「僕は多分、この国から出ないまま死ぬ」

カモメが軽やかに舞う。パスポートを持たずに、ジブラルタル海峡を超えていく。

日本のパスポートが世界最強といわれるのは多くの人が知っていると思いますが、生まれながらに私たちは当たり前のように国境を超えられる。

でも、それは当たり前じゃないんだ。

そう気づかされることが海外旅行中の会話で、多いです。

コロナの影響で以前のように軽やかに旅行に行けなくなった今、同じように当たり前を当たり前じゃないと気づくことが多くありました。

こういった気づきを忘れず、また自由に飛行機に乗って国境が超えられる日が来ることを願うばかりです。

「異文化」に対する好奇心と開放性

もう一つ、私が好きだなと思う旅行記の特徴が

著者の異文化(や歴史)への興味が垣間見えるという点

なんです。

あくまで旅行記やエッセイなので、なにか学術的な知識や詳細な歴史語りを求めているわけじゃないんですが。

ここキレイでした!

景色が最高でした!

といった視覚的興奮だけで終わらない、訪れた国の文化に対する好奇心が強い旅行記はやはり素敵だなと思います。

村上春樹さんの旅エッセイは、割とそんな感じでどれも面白いです。

岡田さんの「0メートルの旅」は、なんというかすごくバランスが良くて。

短く読みやすく、小説のようで、ユーモアもあり、親近感も感じさせながら、かつ読者の異文化への興味を掻き立てるというか。

例えばインドとパキスタンの国境「ワーガ」に行く話。

インドとパキスタンってめちゃくちゃ仲が悪くて「世界の火薬庫」とも呼ばれている場所です。

その国境で毎日、日没近くになると両国の警備隊が互いのパフォーマンスを見せつけ合って火花を散らすセレモニーがあるという話がすごく興味深かった。

両国は同じ時刻に降納式を行った。すると何においても張り合う二国は、自分たちの式典のほうがより豪華でありたいと願った。そしてどちらも相手国に負けじと、次第にパフォーマンスに趣向を凝らすようになったのだ。より美しく、より派手に。そうすると今度は、それを応援する観客が現われた。いつしか両国はその観客数でも競い合うようになり、パフォーマンスはさらに大掛かりになって、観客は増え続けた。

こうして、国境を挟んだ前代未聞の「応援合戦」が開催されることになったのだ。

旅行ってとても面白いので、行って満足してしまうこと多いんです。

私自身、怠惰浅薄な人間なので折角の機会を活かすことができず、その国の文化に深く関心をもったり独自に何かを調べることを放棄してしまうことが多いんです。

でもやはり、知識はメガネのようなもので、知ってるからこそ見えるものって沢山あるのだと思います。

このセレモニーの存在を知らなかったら、そもそも行こうとも思えない。

興味がなければそれが意味することもわからない。

常にアンテナを立てるということ、知的好奇心を忘れないこと、開放的に情報収集を行うこと。

そういった感度の高さがやはり、その人の旅の面白さを支えているのではないかなと感じました。

まとめ|「0メートルの旅」のレビュー

ということで少し衝動的にまとめた感じですが

  • 0メートルの旅

という本の自分なりのレビューや感想をまとめてみました。

あとこの本は、2020年12月コロナ禍に出版された旅エッセイというのも大きいです。

世界が、切断されていく。

一変した日常は刺激的な非日常などではなく、ただ画質の劣化した日常もどきにしか思えなかった。外にすら出ない毎日はモノクロのように味気なくて、かろうじて仕事をして寝るだけの日々が続いた。家での口数も減って、本もネットも見なくなった。旅行記を書く気分にもなれずに、旅への興味も薄れていた。あらゆるものに鈍感になった僕は、切断されゆく世界と同じだった。

この文章を読んだとき、去年の自分の心境と被りすぎて泣きそうになってしまって。

私は旅行好きではあると思うのですが、まだまだ若手(?)というか、旅行歴や極め方が浅いと自覚しています。

それでも辛い。

それなのに世の中には旅に人生や情熱のすべてを捧げていたり、まさに旅玄人みたいな方も沢山いらっしゃるわけで、もう比じゃないくらいの精神的ダメージを追ってるのでは…と想像するところがあります。

だからこそ、この本のタイトル「0メートルの旅」が担うメッセージ性にも惹かれる旅好きは多いと思うんです。

どんな旅行記が魅力的なのか?

つらつらと色々と書きましたが最後に「旅とはなにか?」という答えのない問いに思いを巡らせる旅人のメタ的視点

スタートは家から1600万メートル、地球の最果て、南極だ。そこからアフリカや中東を経て日本に至り、僕の住む東京の街から近所へ、そしてついには部屋の中にまで及ぶ。次第に近づく距離の中で、果たしてどこまでが本当の旅と呼べるのだろうか?

何よりもソレに私は魅力を感じたのかもしれません。

旅好き(かつ本好き)にはとてもおすすめの一冊なので、ぜひチェックしてみてほしいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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