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The Cat's Pajamas

旅と読書をこよなく愛する平成育ちの猫好きです。自分の好きなことだけをのんびりぽつぽつ紡いでいく趣味ブログを目指しています。

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岩波文庫100冊読んだ本好きがオススメする*とても読みやすい岩波文庫5選

何故、私が岩波文庫を100冊読んだのか

皆さんは、岩波文庫をご存知ですか。

物凄く簡単に説明すると、背表紙が茶色くて小難しいタイトルの本が多く、赤とか青とか緑のラベルが下の方についた文庫シリーズです。そして字が小さくて読みにくいのが少し難。

私は以前学生のころ、岩波文庫を古本屋やAmazonで100冊ほど買いあさり、長期期間中に読み漁るという何ともストイックな読書体験をしたことがあります。

理由は二つ。

1つは、岩波文庫を100冊読めば、4年間文学部の大学に通うのに勝る知識が得られる、という言葉をどこかで読んだからです。文学研究科で修士号をもらう身としては、ならば実践してみるしかないという生真面目さからでした。

もう一つの理由、それは失恋したからです。

え、雲行きが怪しくなってきた?いえいえそんなことはありません。当時、生まれて初めて付き合った男性との恋愛に破れ、それはもう見るも無残な落ち武者のような日々を送っていた私は「辛い失恋を忘れるためには趣味に没頭するとよい」という教えに、はっとしました。

「じゃあ、岩波文庫、大人買い、するしかない(泣)」

という流れで、あれよあれよと文庫を買いあさり、部屋に引きこもり、岩波文庫を読んでいたのですが、やはり皆さんのご想像する通り、途中で少し気が狂いそうにはなりましたし、このような常軌を逸した行動をとってしまう性格が恋愛に破れた原因なのでは、とまたもやハッとしたのも事実です。

さて置き、この経験を活かして、今回の記事では私が読んだ岩波文庫の中から、薄くて読みやすいと思われる5冊を選び、紹介したいと思います。

少しでも皆さんの読書の参考になれば、幸いです。

1、吉野源三郎『君たちはどう生きるか』

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

 

岩波文庫を読み漁るのであれば、必ず読んでおきたいと兼ねてから考えていた一冊。岩波文庫のイメージからは程遠い読みやすい道徳的な内容になっています。

この物語では、コぺル君という男の子の成長を通して、少し大切な人生の教えを学ぶことができます。

私が好きなのはコぺル君が、友だちの北見君と仲違いをしてしまうシーンです。というのもコぺル君は、ガキ大将の黒川に北見君がぼこぼこにされているのを見ていながら、怖くて助けに入ることができなかったのです。

コぺル君はそれを悔やんで、知恵熱を出して、寝込んでしまいます。そんなコぺル君に彼のお母さんが語り掛けるシーンです。

お母さんの話の中に「石段の思い出」というお話があるのです。重い荷物を背負って、石段を上っているお婆さんを後ろから見ながら、助けようか助けまいかといろいろと考えているうちに、結局お婆さんはその石段を登り切ってしまった、と。

そうして、お母さんがそばを通た時、ちょっとお母さんの方を見たけれど、別に面白くもないという顔つきで、また向こうを向いてしまったの。それだのに、おかしいわね。

お母さんの方では、その顔を今でもちゃんと覚えているんですよ。

なんてことないこの出来事を、ずっと覚えていたというコぺル君のお母さんは、さらにこう語ります。

あの石段の思い出がなかったら、お母さんは、自分の心の中のよいものやきれいなものを、今ほども生かしてくることが出来なかったでしょう。

人間の一生のうちに出会う一つ一つの出来事が、みんな一回限りのもので、二度と繰り返すことはないのだということも。

だから、その時、その時に、自分の中の綺麗な心をしっかりと生かしてゆかなければいけないのだということも、あの思い出がなかったら、ずっと後まで、気づかないでしまったかもしれないんです。

例え、取り返しのつかない自分の行動で、大切な人の信頼を失ってしまったとしても、それがどんなに悲しく悔やまれることだとしても「そんなことがあっても、それは決して損にはならないのよ」とコぺル君のお母さんは語ります。

そのことだけを考えれば、そりゃあ取り返しがつかないけれど、その後悔のおかげで、人間として肝心なことを、心にしみとおるようにして知れば、その経験は無駄じゃあないんです。

それから後の生活が、そのおかげで、前よりもずっとしっかりした、深みのあるものになるんです。

私は当時、この言葉にとても救われました。道徳的な内容ではありますが、 読みやすく、心に響く内容です。ちなみにこの本を紹介されている方は非常に多く、私が過去記事で紹介している喜多川泰さんのブックリストにも載っていました。おすすめです。

2、ショウペンハウエル『読書について』

読書について 他二篇 (岩波文庫)

読書について 他二篇 (岩波文庫)

 

この本は非常に薄く、読みやすいうえに、刺激的な内容で、こちらの読書欲を掻き立ててくれる一冊です。

ちなみに『読書について』なんてタイトル、読書の素晴らしさを説いてくれる本だと思いませんか? ところがどっこい。そんなに甘くありませんよ。

読書とは他人にモノを考えてもらうことである。一日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失っていく。

常に乗り物を使えば、ついには歩くことを忘れる。

しかしこれこそ多数の学者の実情である。彼らは多読の結果、愚者となった人間である。

これは読書好きを自負する人にとっては、かなり胸にぐさりとくる言葉じゃありませんか。 私は興奮で震えましたね。ページをめくる手が全く止まらず、ぺろりと一冊読み終えてしまいました。 だってすごく言い回しが、素敵だと思いませんか。

紙に書かれた思想は一般に、砂に残った歩行者の足跡以上のものではないのである。歩行者のたどった道は見える。

だが歩行者がその途上で何を見たかを知るには、自分の目を用いなければならない。

良書とは常に時が流れても、物事の真理をつき、読み手を納得させてしまうことにあるのでしょう。 例えば、この一節。心当たりはありませんか?

書物を買求めるのは結構なことであろう。ただしついでにそれを読む時間も、買求めることができればである。

しかし多くの場合、我々は書物の購入と、その内容の獲得とを混同している。

買って満足して本棚に並べて読まない。心当たりがあり過ぎて、ぐっとなりますね。他にもこんな一節があります 。

人々はあらゆる時代の生み出した最良の書物には目もくれず、最も新しいものだけをつねに読むので、著作家たちは流行思想という狭い垣の中に安住し、時代はいよいよ深く自らの作り出す泥土に埋もれていく。

古典を軽視する人というのは、やはりどの時代にも多くいるものです。

古臭いと一蹴するものに、実はもっと簡潔に、もっと説得力を持った、力強い言葉が宿っていたりするのではないか、と日常生活を通して思うことも多いのですが、気づいていない人も多くいる。このような言葉に出会うとより一層、古典を愛する気持ちを大切にしようと思えてきます。

そしてこの本もまた、できるだけ多くの人に現在もなお読んでほしいと願わずにはいられません。おすすめです。

3、アラン『幸福論』

幸福論 (岩波文庫)

幸福論 (岩波文庫)

 

世界三大幸福論と呼ばれるうちの一冊。

新聞の連載コラムとしてアランが書き綴ってきたものを書物にまとめたというこの『幸福論』は1つ1つの章がとても簡潔で読みやすく、それでいて心に残る言葉の多い本でした。

自分が倒れると思うと、ぼくは本当に倒れる。自分が何もできないと思うと、ぼくは本当に何もできない。

自分の期待に裏切られると思うと、ぼくはほんとうに裏切られる。そのことによく注意しなければならない。

良い天気を作り出すのも、嵐を作り出すのもぼく自身なのだ。

説明するまでもない一節ですね。素晴らしいと思います。個人的に、この本は名言の宝庫と思っているのですが、他にも

人間の世界が想像力によって牛耳られているのは、想像力はわれわれの習慣から自由になれないからだ。

だから、想像力は作り出すものではないといわねばならない。

作り出すのは行動である。

考えれる範囲でしか自分は行動できない、想像することのできない出来事は訪れないと思い込んでいる人間の思考の浅はかさに、アランは警鐘を鳴らしているのがわかります。そにかく視点が鋭く、文章がうまい。

アランは行動の重要性を、こう説いていたりもします。

いったいだれが、行く道を選んでから出発したか。

ぼくはそれを尋ねる。

だれも選択はしなかった。なぜなら、われわれはみんな、最初は子どもであるから。誰も選択しなかった。

みんな、まず行動したのだ。

こうして職業は、天性と環境の結果である。だから、あれこれと考え込んでいる人はけっして決めることができない。

理由や動機を詮索する学校の分析ほど滑稽なものはない。

この本は、本当に好きです。

最近の自己啓発本を読めば「行動が大事」ということは散々書かれていたりするのですが、もっと百年以上の書物に、ずっと深い言葉で、説得力をもって、それを大衆に伝えていた人がいたということを、もっと多くの人が知っておいても良いと思います。

最近ではよくこのような読みやすい文庫が本屋に並んでいるので、今から手に取られるという読書好きの方もおおいかもしれませんね。

アランの幸福論 エッセンシャル版(特装版)

アランの幸福論 エッセンシャル版(特装版)

 

けれどもできれば、言葉を切り取ったサマライズのような文庫ではなく、一冊そのまま本棚に収めてほしいとも思います。

ちなみに世界三大幸福論のうち、残りの二冊はラッセルの『幸福論』とヒルティの『幸福論』です。どちらも読みましたが、ヒルティの『幸福論』はやや宗教色が強いという印象でした。

個人的にはラッセルの『幸福論』も好きなのですが、今回はより好きなアランの『幸福論』を紹介いたしました。興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

 

 4、ゲーテ『若きウェルテルの悩み』

若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

 

読んだことない人、とりあえず読んでほしいです。ちなみにウェルテルという若者が、一人の女性に片思いし続ける話です。ウェルテル君は彼女が結婚しても、片思いし続けるんです。

『若きウェルテル』には興味深い逸話があります。当時、作中でウェルテルが着ている青い燕尾服に黄色いチョッキとズボンというファッションが流行し、さらにそれと同じ格好をしてウェルテルと同じように発砲自殺してしまう青年が急増してしたのです。

ちなみにゲーテと言えば、かのナポレオンも大ファンの作家でした。実は昔、ナポレオンは文学青年で物凄い長文のラブレターを妻のジョセフィーヌに送り付けており、後世にもそれが黒歴史?として残っているような人物です。ゲーテの物語に登場する主人公に共感するところも多くあったのでしょうね。

ちなみに私は恋愛下手で十代は片思いばかりだったんですが、この本を読んで片思いをしている人の思い込みの凄さを客観視することができ「片思いはロクなものじゃないから3か月で終わらせる」という自分ルールを制定。その後の恋愛パターンに劇的な変化をもたらすことが出来ました。ゲーテさん、有難うございます。

ちなみにこの『若きウェルテル』というタイトル、世界史の授業で習ったという方もいるのではないでしょうか。覚えただけではつまらない、ぜひ本を手に取って読んでほしいと思います。一読の価値、ありですよ。

5、シュトルム『みずうみ』

みずうみ 他四篇 (岩波文庫)

みずうみ 他四篇 (岩波文庫)

 

最後は岩波文庫という点に拘って、シュトルム『みずうみ』をお勧めしたいと思います。

この本は読後、妙に印象に残ってしまい、まるで一枚の絵画を眺めたような感覚で、今でも想像した情景がぱあっと脳裏に蘇ります。お互い思いあっているのに結ばれなかった男女の儚い恋を描いています。

ありふれた恋愛物語と言ってしまえばそうなのですが、なんとも尾を引きずる美しさがあり、個人的には手放すことが出来ない一冊です。

他にも私はこのとき『嵐が丘』や『椿姫』やや『ジェーン・エア』やらなんやらといろいろと岩波文庫以外の文学も読み漁っていました。

けれどもこの『みずうみ』は岩波文庫でしか読むことが出来ない(違ったらごめんなさい)ということで、最後に挙げておきたいと思いました。

あまり知られていない一冊かもしれませんが、海外文学(ちなみに『みずうみ』の作者はドイツの方)の好きな方にお勧めしたいです。

まとめ

ということで、あまり岩波文庫を読んだことがない人にも手に取りやすい本を5冊紹介させていただきました。

他にも『死に至る病』やら『プラトン』やら『中世騎士物語』やら『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の崩壊』など手当たり次第に読みましたが、残念ながら、もう読んだ瞬間に忘れていきました。

けれども最初に戻れば、失恋を忘れるために行った岩波文庫乱読。

やはり、一定の効果がありました。

あの半年で、一番泣くことの少なかったのは、岩波文庫にハマっていたときだなと振り返って思います。趣味にハマるというのは、やはり効果的です。

ただし、読めばいいというものじゃない。

大量の本を一気に読んでも咀嚼できるわけがないのです。

最後にショウペンハウエルの教えを引いて、今回の記事を終えたいと思います。

「反復は研究の母なり」。

重要な書物はいかなるものも、続けて二度読むべきである。

精進したいと思います。

皆様の読書に何かしらの参考になるものがあれば、幸いです。最後まで目を通してくださり、ありがとうございました!

*読書に関する記事は、他にもあります。宜しければ、お立ち寄りください。

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