ゲスの極み乙女。『もう切ないとは言わせない』と言われたい女の悪夢

【解釈・レビュー】ゲスの極み乙女。『もう切ないとは言わせない』

2015年9月17日。

私はその日、大阪城ホールにいた。

以前から注目していたバンド

「ゲスの極み乙女。」

のライブ公演を見るために。

1stシングル「猟奇的なキスを私にして/アソビ」、2ndシングル「私以外私じゃないの」そして3rdシングル「ロマンスがありあまる」を発売。

一連の流れを追いながら、私はこの時期、確信していた。

 

この「ゲスの極み乙女。」というバンドないしボーカリスト兼作曲の川谷絵音氏には今、Jロックの神が舞い降りていると。

 

このマッシュルームカットの彼、絶対に”くる”!

熱い確信に背を押されるようにライブに行き、私はそこで確信を深めるように満足げな笑みを浮かべ、その日家路についたのだった。

そして、それから3か月。

彼は文字通り時代の寵児となっていた。

 

そう

かのゲス不倫騒動で

おい

おい

いやいやいやいや

違うだろ、そうじゃないだろ、と。

ベッキーさんの悲しみや苦しみの乗り越え方

ベッキーさんの悲しみや苦しみの乗り越え方

 

この衝撃。

一体、何と言葉にしたらいいか。

「今注目のバンドがいる」と言っても興味なさそうに聞いていた友人が、わざわざ私に尋ねてくる。

「こないだ言ってたバンドのボーカルの人だよね(笑)」と。

私は悲しげな笑みを浮かべるだけだった。

今や多くの人が「ゲスの極み乙女。」というバンドの名を知っている。

果たしてこれは、喜ぶべきなのだろうか?

いや、迷う必要なんてない。

何故なら、彼らのバンド名は

ゲスの極み…!

その名を体現するかのようなゲスキャンダルで世間を賑わせることに成功し、不動の知名度を世間で獲得した、これはまさか一種のストラテジー?

しかしこのバンドに対する、私の興味関心は急降下。

不倫を裁くのは世間じゃない。

しかし私は不倫なんてする男に、払う銭はないんだ、馬鹿野郎!!!

それから早3年。

月日が流れるのは早いものである。

世間の関心もスキャンダルに対する私の抵抗も薄れるなか、久々に、彼らの曲を聴いた。

曲とタイトルは

「もう切ないとは言わせない」

もう切ないとは言わせない

もう切ないとは言わせない

 

軽やかなメロディが疾走し、ピアノの音が切なげに転がり、男が愛する女に誓う。

「もう切ないとは言わせない」

なんてロマンチックな曲なんだ….!

最初、この曲を聴きながら、偏見に満ちた頭で私は考えた。

 

不倫するゲス男でも、こんな美しい曲つくれるんだ…

 

既に何十年昔にミスターな子供の偉大なボーカリストがそれを証明していたこと思い出す。

不倫の有無と曲の不出来は関係ない。

音楽に道徳なんて糞くらえだ。

そう自分を納得させて、もう一度リピート。

なんて素敵な曲なんだ、もう一度リピート。

うん、気にいった、もう一度…

 

なんてことを繰り返してるうちに、ふっとまるで閃光が眼の前で瞬いたかのように私は気づいたのだった。

 

あかんで

 

この歌に出てくる男

ホンマにあかんで

 

 

ということで前置きが長かったが、以下この曲の内容を分析してみたい。


ゲスの極み乙女。「もう切ないとは言わせない」

祝祭はコンビニエンス
恋人はデルタクルーズ
怠ける僕らは何かを忘れた

甘噛み合いのサイクルは
いがみ合いを減らした
足りないものが増えてって
足りないが心地よくなった

ああ最低だ
ああ最低だこんなんじゃ

この歌詞の冒頭は明らかに、男女の関係の終わりを仄めかしている。

特別な出来事である「祝祭」が、便利(コンビニエンス)でありきたりなものに。

恋人は三角州(デルタ)を遊覧するような刺激を欠いたクルーズのように。

お互いがお互いに対する、関心を失ってしまった。

「足りないものが増えてって」それを補うつもりもない。
「足りないが心地よくなった」とごまかして、そのまま放置を続けてる。

 

そう、最低な関係だ。

 

恋の終りが見え始めた、倦怠期。

そんな寂しさを増長させる哀愁漂う哀しきピアノのメロディ。

 

すると男が、こう切り出すわけだ。

 

だから今補って余るほど
気持ち取り出してみてもいいかな
いいかな

 

いいに決まってんじゃん!

取り出した貴方の気持ち、聞かせて!?

 

ジャッジャーン♪

 

もっと あともうちょっと
君を好きになったら
もう切ないとは言わせない
溢れるたび言葉濁さない

きっと僕らきっと
わかってると思うから

もう切ないとは言わせない
そのうち一緒になろうよ

これ、もう

 

プロポーズじゃん!(泣)

 

って思った、私最初にこれを聞いた時。

 

だって言ってんだよ「もう切ないとは言わせない」って男気溢れる言葉でさ。

しかも「一緒になろうよ」ってプロポーズ以外の意図含んでる?

好きな男にこれ言われたら女誰でも目潤ませるよね?

この曲のPVだって、メンバー全員が「大事なもんやっと見つけたぜ」って爽やかな顔で自転車で走ってるんだよ?

あの頃の自分取り戻そうってもがいてんだよ?

もう視聴者としては歌に出てくる男女の幸せを願う以外の選択肢ある?

ないでしょ?

これハッピーエンドで当然でしょ?

 

だが、しかし…

 

何度か聞いた後で、ふっと気づいた。

「もう切ないとは言わせない」ためには条件が付いてるってことに。

 

もっと あともうちょっと
君を好きになったら
もう切ないとは言わせない♪

 

ん?

 

 

もっと あともうちょっと
君を好きになったら…

 

 

もっと

あともうちょっと

 

君を好きになったら!???

 

そう、この男は今すぐ女に誓っているわけじゃない。

「あともうちょっと君を好きになったら」

そのときは

「もう切ないとは言わせない」

と言ってるのである。

もっとあともうちょっと

もっとあともうちょっと、もっとあともうちょっと…!?

私はサビを無限ループさせながら、冷静な頭で考えた。

いや、もっとあともうちょっとって

 

どんくらいよ?

 

ってかよ

逆に言わせれば「もっとあともうちょっと」君を好きになることがなかったら

 

切ないと言わせたまま

 

ってことじゃねぇか、この男、ちょっと待って、ちょっ待てよっ!!!!!!

それただの悪夢じゃん。

しかもよく考えたら「もう切ないとは言わせない」ってことは

 

(いつも切ないと言わせてるけど)

 

って地味に省略かかってない?

これ女の方、相当辛い状況なんじゃない?

更にだ。

1つ気になることが見つかると、どんどんと気になる部分が見えてくるから恐ろしい。

 

 

きっと~僕らきっと
わかってると思うから~♪

 

 

きっと?

わかってると思うか、ら?

 

いやそれほんと?

お互いちゃんとわかりあってんの?

自分が勝手にそう思ってるだけじゃないの?

 

 

嗚呼、どうして気づかなかったんだろう。

 

 

そのうち一緒になろうよ~♪

 

これはプロポーズなんかじゃない。

 

「一緒になろうよ」と

そのうち一緒になろうよ」は

全然別もんだ。

 

「そのうち」って、一体いつだよ?

 

ここまで考えると、この曲から浮かぶ光景は最初に感じたものと全く異質なものになっていた。

この男の怖いところは、すべてが曖昧なのである。

推測に満ちて、可能性を仄めかす、それでいて根拠はない。

その曖昧さに解りやすく赤字装飾をつけてみたのがこちら。

もっと あともうちょっと
君を好きになったら
もう切ないとは言わせない
溢れるたび言葉濁さない

きっと僕らきっと
わかってると思うから

もう切ないとは言わせない
そのうち一緒になろうよ

けれども、そんな男の曖昧さに、優柔不断さに、女は期待を重ねてしまうのだろう。

 

「もう切ないとは言わせない」

男の言葉に、女は彼の愛を見たと確信する。

そして、可能性を見るのだ。

 

彼が加えた「もっと あともうちょっと君を好きになったら」という条件に。

「そのうち」は「きっと」訪れる、そんな未来が来るはずだ、と疑わない女の悪夢を想像するのはあまりに容易い。

 

自分との祝祭をコンビニエンスなものとしか考えていなくて

自分をデルタクルーズのようにトキメキない女だと思っていて

いつも「切ない」と言ってしまう不毛な関係だって「僕らわかってる」

 

でも「あともうちょっと」私のことを好きになれば「そのうち一緒に」なれるのね…!

 

南無。

この曲を作った人は、確実に女にモテるだろう、認める、認める他ない。

 

全てを見せない仄めかし。

断定と保留に、期待と不安を見出して、揺れる女心はいつだってこんな男の虜になるんだろう。

ゲスを極めた男が作る音楽は、今も変わらず聞く人の心を震わせる。

女心をその手に握るように彼は言葉巧みに、私たちの耳に麗らかと愛を囁くのである。

その言葉の裏に隠された、ゲスい男の都合を優先した罠に、いつだって私たち女はすぐに気づくことができない。

そんなことを深夜に呟きながら、また今日も私はこの曲をエンドレスリピートしてしまうのだった。

好きなら問わない(通常盤)

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それでは最後まで記事を読んで下さり、ありがとうございました!

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